チームS:シェイダさん救援グループ 2002/11/28 up
 
(1)エグテダーリ氏証人採用内定するもタイミング悪し?
〜 山が動きつつある?第13回口頭弁論 〜

 10月11日午前11時より、シェイダさん裁判の第13回口頭弁論が、東京地方裁判所6階の第606号法廷で開かれました。いつもよりちょっと寂し目の法廷だったのですが、内容はかなり濃いものでした。(ごめんなさい、筆者も遅刻してしまい、シェイダさんや他の傍聴者の皆さんに心配をおかけしてしまいました)
 シェイダさんの裁判はもう2年半にも及んでいます。今回の法廷の焦点は、シェイダさん側が1年以上前に申請した在米イラン人人権活動家、エグテダーリ氏を証人採用するかどうか。もし裁判所が証人採用しなければ、年内に結審となり、年度内の判決がほぼ確実となります。どうなるでしょう。
 最近、本裁判を担当している男性の市村陽典裁判長と、向かって右側に座っている若い女性の馬渡裁判官は、とみに積極的な態度で法廷に臨んでいます。とくに市村裁判長は、今回非常に積極的に原告側・被告側に質問を飛ばしました。

<積極的な市村裁判長の態度>

 まず、法務省が今回、提出した証拠について。前回打ちひしがれた表情で「外務省から証拠が来ません。もう来ないという前提で進めて下さい」といっていた法務省は、今回は証拠を出してきました。しかしその内容は「外務省の資料を基に法務省がまとめた」というわずか3枚の図表で、「証拠」と言えるようなものではありません。当然、裁判長は「基になった資料はあるのですか?」と質問。また、諸外国で出された判決などはあるのかどうかについても質問。「まだ和訳してない」というのが法務省の答えでした。
 次に裁判長は、日本も3年前に加盟した「拷問等禁止条約」に話を進めました。「難民条約」に加え、「拷問等禁止条約」にも、拷問を受ける可能性がある国に送還してはならないという規定があります。シェイダさん側は、シェイダさんの送還が違法である理由として、この「拷問等禁止条約」をも根拠に含めています。これについて裁判長は、もし原告がイランに送還されて石打ち刑などに処された場合、それが「残虐な刑罰」にあたるかどうかについて国側に主張を出すように指示しました。これはかなり積極的な態度だと言えます。

<エグテダーリ氏の招へい:「うれしい誤算」>

 最後が肝心のエグテダーリ氏の招へいについてです。裁判長は「もし12月、または1月に来日できるというなら、日程を指定して、エグテダーリ氏を法廷に招いてもよいと考えています」と言い出しました。なんと!エグテダーリ氏の招へいについてはじめて法廷で問われたのは、2001年10月16日の第7回口頭弁論。それからほぼ1年が経ったわけです。
 私たちとしては、エグテダーリ氏の証人申請が受け入れられる可能性について、おそらく非常に少ないだろうと考えていました。そのため、私たちはエグテダーリ氏に対して、イランにおける同性愛者の処刑等に関して詳細な書面を書いてもらうようにお願いし、その結果、エグテダーリ氏は前回の法廷に向けて「書面による証言」という文書を執筆してくれたのです。それが証人採用ということで、私たちにとっては「うれしい誤算」でした。シェイダさん側の大橋弁護士は、エグテダーリ氏の日程を確認して調整する、と答え、それに要する期間として1ヶ月の猶予が与えられました。次回の法廷は11月15日と決まりました。

<しかし、タイミング悪し>

 原告団では、早速エグテダーリ氏に連絡を取り、12月または1月の来日が可能かどうか打診しました。エグテダーリ氏からは数日後に回答がありました。彼は12月から1月にかけて国外で学会発表等のためにすでに予定が入っており、2月中旬までは来日することができない、2月15日以降であれば喜んで来日する、ということでした。うーん、残念。
 裁判長が1月という時期を指定したのは、1月に尋問が終わらないと、年度内に判決を出すことが出来ず、現在の裁判官のチームで判決が書けなくなってしまう可能性があるからです。私たち自身としても、市村裁判長が非常に積極的な態度で法廷に臨んでいること、市村裁判長の近年の難民問題に関する判決は非常に質の高いものになってきているということなどから、なるべく現在のチームに判決を出してほしいと考えており、なんとか両立を図れないかと策を練っているところです。
 次回の第14回口頭弁論は、この点がどうなるか、そして判決に向けての裁判の流れがどうなるかがほぼ確定します。ぜひともお越し下さい。11月15日(金曜日)午後1時30分、606号法廷です。

■□■ シェイダさん在留権裁判 第14回口頭弁論 ■□■
 ●日時:2002年11月15日(金)午後1時30分〜(1時集合)
 ●場所:東京地方裁判所第606号法廷
 (営団地下鉄霞ヶ関駅下車徒歩3分)
■□■ 第14回口頭弁論 報告集会 ■□■

 ●日時:2002年11月15日(金)午後2時〜
 ●場所:弁護士会館を予定 

 
(1)山が動いた!シェイダ裁判 エグテダーリ氏の証人尋問決定!
〜 今後、大きな支援の輪が必要になります!! 〜

 11月15日(金)午後1時30分より、シェイダさん裁判の第14回口頭弁論が、東京地方裁判所第606号法廷で開かれました。
 この法廷の課題は、以下のようなことでした。
○裁判所として、シェイダさん側が証人として申請しているグダーズ・エグテダーリ氏(イランの人権活動家)を採用するかどうかを決める。
○同性愛者が「特定の社会的集団」であるか、また、イランで行われている「石打ち刑」などの処刑方法が、拷問等禁止条約にいうところの「拷問」にあたるかどうか、法務省側が主張を出す。
○判決に向けた今後の日程・見通しを定める。
○前回法務省が提出した証拠資料(第44号参照)に対するシェイダさん側の反論を提出する。
 これらのことについて、今回、まさに「山が動いた」といえるような大きな判断がされました。以下、見ていきましょう。

<<<エグテダーリ氏が証人として採用される!!>>>

 この法廷で決まった、一番大きいことは、なんと言っても証人の採用でしょう。
 シェイダさん側は、前回の法廷の後、エグテダーリ氏に連絡を取り、エグテダーリ氏からスケジュールを聞いて市村裁判長に伝えておきました。エグテダーリ氏は、1月中は外国におり、証人尋問のための来日の予定はとれないということで、2月15日以降なら可能だということでした。
 裁判長は、「裁判所としては、証人申請を前向きに考えていますから。ただ、直前になって日程を決めるというのも、先方の都合もあることですので、今決めてしまいましょう」と言い、証人尋問の日程を2月18日(火)午後1時から4時、と定めました。
 のちにエグテダーリ氏に確認したところ、18日は日本に来ることができる、ということでしたので、この日は証人尋問ということで確定です。
 エグテダーリ氏は、米国にある「イラン人権ワーキンググループ」(Iranian Human Rigths Working Group: IHRWG)のボードメンバーで、自身はゲイではありませんが、イラン・イスラーム共和国の死刑の問題について調べているうちに、「姦通」(婚姻外の性行為)と同性間性行為に関する処刑の問題に行き当たり、長い論文をまとめた人物です。1990年にイランを出国、現在は米国オレゴン州のポートランド大学において、システム工学の研究を行うかたわら、イランの人権状況についての調査研究を続けています。
 私たちは、エグテダーリ氏の証人尋問によって、イランの同性愛者がおかれている社会的な迫害と国家的な迫害の関連性などについて、具体的にはっきりさせていこうと考えています。

<<<証拠資料等について>>>

 前回の法廷で法務省は、(1)先進国における同性愛者の難民認定に関する状況、(2)「イスラーム教国」における同性愛者の迫害の状況、および(3)イランにおける同性愛者の迫害の状況について、「外務省からの情報に基づいて作成した」と称して、3枚の証拠資料を提出しました。この証拠の問題点は本ニュースアップデイト前号に示しましたが、(1)については、米国など同性愛者の難民を積極的に受け入れている国を除外する、(2)については、世俗主義体制をとる国の状況を多く紹介し、イスラーム法に基づく体制をとっている国についてはほとんど紹介していない、また、いずれの証拠についても、出典が全く示されていない、など、著しく欠陥の多い証拠資料でした。
 これらについて、シェイダさん側はこれらの証拠の欠陥や内容的な矛盾などを全面的に指摘する書面を作成、提出しました。また、前回の法廷で指摘されていた「特定の社会的集団」についても、シェイダさん側はヨーロッパ評議会(CoE=欧州43ヶ国が加盟する国際機関で、欧州人権裁判所などが付属し、主に人権関係について取り組んでいる)の報告書を証拠として提出。
 一方、法務省側は、前回裁判所に提出を要求されていた「特定の社会的集団」に関する見解、および「拷問等禁止条約」に関する見解について、いずれも次回以降に先送りすることを表明。裁判所側は、これらの点について法務省の見解を待たなければ、裁判を終わらせることはできない、と述べ、証人尋問以外に、一般の法廷(第15回口頭弁論)を次回12月20日(金)午後4時30分から入れることになりました。

<<<エグテダーリ氏の招請にご協力を!!!>>>

 上記のように、今回の法廷では非常に大きなことが決まりました。エグテダーリ氏の証人尋問です。
 エグテダーリ氏は在米の人権活動家で、2月18日にアメリカから呼ばなければなりません。交通費・宿泊費など、いろいろな経費がかかります。
 当方としては、エグテダーリ氏招請に関しては、4〜5日を考えており、滞在中に人権関係の団体などとともに集会を開催するなどして交流企画をもちたいと考えています。
 経費の面、エグテダーリ氏の案内・アテンドの面など、招へい企画には多くの方々の支援が必要です。ぜひとも、カンパおよびボランティアでの協力をお願いいたします。
 近日中に「エグテダーリ氏招へいキャンペーン」を呼びかけさせていただくことになります。まずはカンパについてですが、可能な方、ぜひとも以下の口座によろしくお願いいたします。

○●○在米イラン人人権活動家エグテダーリ氏から話を聞こう!!キャンペーン○●○

 ・目標金額:合計40万円
 ・口座名義:シェイダ基金
 ・口座番号:郵便振替口座 00100-2-554626
 では、エグテダーリ氏招請へのご協力、是非ともよろしくお願いいたします!!!

■□■ シェイダさん在留権裁判 第15回口頭弁論 ■□■
●日時:2002年12月20日(金)午後4時30分〜(4時集合)
●場所:東京地方裁判所第606号法廷
(営団地下鉄霞ヶ関駅下車徒歩3分)
■□■ 第14回口頭弁論 報告集会 ■□■

 ●日時:2002年12月20日(金)午後5時〜
 ●場所:弁護士会館を予定