チームS:シェイダさん救援グループ 2003/01/06 up
 
エグテダーリ氏招へいへの助走:第15回口頭弁論
〜法務省側は判例を一つ出しただけ〜

 11月15日に開かれた第14回口頭弁論では、シェイダさん側が申請していたイランの人権問題専門家、グダーズ・エグテダーリ氏(米国オレゴン州在住)が証人採用され、その日時が2月18日に定められました。一方、「石打ち刑は拷問等禁止条約で禁止されている拷問に当たるのか」「同性愛者は難民条約で定められている『特定の社会的集団』に当たるのか」など、裁判所が法務省に向けて出した宿題に法務省側が応えるための期日として、12月19日に第15回口頭弁論が設定されました。

 冬至も近づく東京地裁。ほぼ日の暮れかかった4時30分に裁判が始まりました。法務省側がなにか証拠を提出するのではないかと思いきや、出てきたのは、かなり前にドイツで出された同性愛者の難民認定に関する裁判の判決の翻訳だけでした。法務省側は最近提出した証拠で、「ドイツの判例では、同性愛者として難民認定するには、本人が同性にしか性欲が向かず、その性欲を押さえることができないということを立証しなければならないと書いてある」などと主張していましたが、それを立証するためのものだそうです。しかし、判決をよく読んでみると、被告となっているのは1960年代(帝政時代)に欧州に移住したイラン人で、裁判における主要な争点も、シェイダさんや、現在のイラン・イスラーム共和国の迫害により亡命を強いられた他のイラン人の同性愛者たちとは、全く異なった内容のものです。わざわざこんなものを提出してくるとは、法務省(もしかしたら外務省?)も気が利いているというか、なんというか……。
 
 今回の法廷は、法務省に答弁の機会を与えるために開かれたものであるにもかかわらず、法務省側は、裁判所から出された上記の二つの質問については、「まだ準備中」としか応えませんでした。しかし、「特定の社会的集団」問題に関しては、本年2月18日の第9回口頭弁論で「同性愛者を『特定の社会的集団』とみなすことについて争うつもりはない」と答弁したのをあっさりと覆し、「まだ準備中なのですが、同性愛者が『特定の社会的集団』であるということについては争う方向で準備を進めています」と、不気味な(?)答え。どうやってそんな主張をするのか、法務省側のお手並み拝見です。
 
 一方、今回の法廷は主に法務省を対象としたものであるということもあって、シェイダさん側はとくに提出物は出しませんでした。しかし、先日、イギリスのウェズリー・グリック事務弁護士事務所から送付を受けた、イギリスにおける同性愛者の難民認定の決定文6本を現在、順次翻訳しているところであり、現在、3本までできあがっています。イラン人の難民認定1本以外に、ジャマイカ人の難民認定4本、ナミビア人の難民認定1本を含むこの決定文は、「同性愛者の迫害に関する難民認定の基準」について考えなければならないと思っている、市村裁判長をはじめとする裁判官にとって大きな朗報になるでしょう。
 
 次回の裁判は、今から約2ヶ月半おいて、エグテダーリ氏の尋問がなされる2月18日です。シェイダさん裁判第1審最大の山場となります。ぜひともご参加下さい。また、エグテダーリ氏招請に当たっては、多くの皆様のご協力が不可欠です。今後、具体的なことは順次、お知らせしていきますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

■□■ シェイダさん在留権裁判第16回口頭弁論 ■□■
 ○日時:2003年2月18日午後2時〜
 (集合時間:午後1時30分)
 ○場所:東京地方裁判所6階606号法廷
 (営団地下鉄霞ヶ関駅下車徒歩3分)
■□■ 第16回口頭弁論報告集会 ■□■
〜イラン人人権問題専門家 グダーズ・エグテダーリさんを迎えて〜

 ○日時:2003年2月18日午後5時〜
 ○場所:弁護士会館(予定)

 
エグテダーリ氏の招へいに関するホームページが完成
「イラン人権問題スペシャリストと共に考える6日間」

 エグテダーリ氏の招へいについては、シェイダさんの支援グループ「チームS」が、「イラン人権問題スペシャリストと共に考える6日間」というホームページを完成させました。
 エグテダーリ氏とは誰だろう? などの基本的な質問から、エグテダーリ氏招へいに向けたスタッフ・ボランティアの募集、さらには、エグテダーリ氏がシェイダさんの裁判のために執筆した意見書、エグテダーリ氏がイランの同性愛者迫害についてまとめた論文、また、イランの改革派の運動についてまとめた論文など、盛りだくさんのホームページです。ぜひとも一度のぞいてみて下さい。

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