ドイツでは8月1日、同性愛者同士の婚姻を認めた新法「同性共同生活差別撤廃法(生涯のパートナー法)」が施行されることになり、従来の異性愛者とほぼ同等の婚姻生活が法的に可能になった。同様な法律はスカンジナビア諸国とベルギー・オランダですでに実現している。
同法は連邦衆議院の決議を経て、本年2月16日に公布されていた。しかし、これを違憲とする保守政権のバイエルンとザクセン州両政府が、「家族や夫婦の規範が崩壊する」として憲法裁判所(最高裁)に8月からの施行の仮差止めを求めて提訴したため、実現が危ぶまれていた。7月18日、同裁判所は「かりに将来、同裁判所が違憲判断を下すような事態があっても、憲法第7条で国家秩序の特別な保護を受けている従来の婚姻と家族は、同法の施行により不可逆的な不利を受けない」と棄却の判断を下し施行を認めた。これにより、最高裁の合憲判断もほぼ確実なものとなった。
この法律により、同性同士の婚姻も、お互いの保護と扶養の義務と権利が生じ、姓も一つにするか、あるいは片方が元来の姓を併記した二重姓も可能となる。異性間婚姻と同様の姻戚関係も相続権も生じる。配偶者が外国籍の場合は滞在、労働権が保障される。配偶者の一方に子どもがある場合の他方の子どもへの養育権は、日常生活の発言権(例えば学校の保護者会など)に制限されるが、緊急の場合には実子同様の養育権を行使できる。また、共同で養子縁組はできないが、どちらか一方が養子縁組をすることはできる。
18日の判決が報道された後、全国の戸籍役場には婚姻届の予約が殺到している。地元紙の報道によれば、ベルリンでの第1号はグドロン・パニールさんとアンゲリカ・バルドウさんの女性同士のカップル。アンゲリカさんに障害があり、車椅子が必要なため、医療・介護保険が有利になる結婚は大幅な負担軽減でもある。8月1日午前9時、二人は区の戸籍役場で婚姻届にサインをする。
(在ベルリン、ジャーナリスト 梶村太一郎)
▼参考までに、オランダ政府統計局が25日に発表したところによれば、今年4月に同性同士の結婚が合法化されてから、1ヶ月間で386組が結婚した。男性同士のカップルが女性同士のカップルの1.5倍。オランダは同性結婚合法化前の98年から、同性愛者が「パートナー」として実質的に結婚することを認め、社会保障や相続の面で異性間の夫婦と同じ権利を認めてきた。パートナーは男性同士が約3500組、女性同士が3100組いるが、今年に入って登録したカップルは約300組にすぎず、統計局はパートナー制度の必要性が薄れたと分析している。
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