「結婚」の概念が変化していることに対応して、政府も認識を新たにしなければならない。——このたびカナダのブリティッシュ・コロンビア州の控訴裁判所は、ゲイ・レスビアンのカップルが結婚する権利を支持する判決を下した。
この判決によると、カナダの連邦政府と州政府には、同性カップルの結婚を禁じる現行の婚姻法規を変更する猶予が2004年7月12日まで与えられる。この日以降は、変更の有無にかかわらず、同性カップルの結婚は許可されることが義務付けられる。
この訴訟は、同州で結婚証明書の発行を拒否された8組のゲイ・レズビアンのカップルが起こしたもの。原告代理人のジョセフ・アーベイ弁護士は、「われわれの勝利だ。判決に大変満足している。これで結婚を望むゲイ・レズビアンのカップルは、異性のカップルとかわらず結婚する権利が与えられることになる」と話している。
今回のブリティッシュ・コロンビア州の判決は、「法に基づき、従来の通り結婚の定義を男女間の結びつきに限り、例外は認めない」とする2001年に同州の最高裁判所が出した判決をくつがえすもの。最高裁判所の判決では、結婚の原則は生殖——子供をつくり、生み育てること——であり、同性のカップルでは生物学的にこれが不可能であるため結婚は認められない、としている。
これに対して、今回の判決でジョー・アン・プラウズ裁判長は、結婚の原則が生殖だという考えは近年変化しており、もはや同性間の結婚を禁ずる正当な理由にはならない、と述べている。また同裁判長は、最高裁判所の判決では技術の発達や養子関連の法改正により、同性カップルも子供をもち育てられる事実が無視されていると指摘している。その上で、結婚の法的な定義は、「二名の個人の法的な結びつきに限り、例外は認めない」と変更されるべきであり、その二名が同性か異性かは関係ないとしている。また、子供をつくるか否かは、もはや結婚を定義する特徴にはならない、との考えを示している。
キリスト教の団体であるフォーカス・オン・ザ・ファミリー協会は、今回の判決がカナダ最高裁に控訴されることを希望している。同協会のマイケル・マーテンス氏は、「今回の裁定を疑問に思うカナダ国民は多い。これは権利うんぬんの問題ではない。結婚というのは、あくまでも男女の結びつきを意味するのであり、それが変わることはない」と不満を表している。
一方、同性カップル結婚の支持者は、判決を強く支持。パートナーのロイド・ソーンヒルさんとの結婚を35年間待ち望んでいたボブ・ピーコックさんは、「非常に嬉しい」と話している。しかしこの訴訟が今度はカナダ最高裁に控訴される可能性を考え、正式な婚姻まで一年は待つつもりだという。
カナダでは、オンタリオ州とケベック州においても、裁判所が同性間のカップルの結婚を支持する判決を出しているが、現行の規制の変更に厳しい姿勢を示したのはブリティッシュ・コロンビア州が初めて。なお、オタワ州では現在控訴中である。
カナダ連邦公正人権常任委員会(The Federal Standing Committee on Justice and Human
Rights)は、全国で公聴会を開き、国会が同性間結婚の禁止を解くべきか、一般の意見を聞く機会を設けている。
またカナダでは、同性愛が法的に認められた1969年からゲイ・レズビアンの権利は向上しており、こういった動きは議論を呼ぶ一方で、国民の強い支持を得ている。
翻訳&記事の解説:HIME
(米国カリフォルニア州在住/翻訳スタッフ)
※情報はYさんからいただきました。ありがとうございました。
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