カナダは、クレティエン首相が、オンタリオ州の控訴裁の「結婚の定義が男女に限定されているのは違憲」という判決に基づいて、6月17日、同性間の結婚を合法化する方針を発表した。その後、政府は、立法に向けて準備を進めてきたが、様々な壁に突き当たっている。
その最大なものは、9月16日に、保守派議員の連合から下院議会に提出された決議(拘束力はない)である。「結婚は、1人の男性と1人の女性が結びつくこと、と定義される」というもので、137対132の僅差で何とか否決された。前日、クレティエン首相は「社会は、進化したのです。今こそ、同性同士の結婚の正当性を認める時です」と語っている(この背景には、4年前に、政府自由党自身が同性婚を否定するような決議を出しているという経緯がある)。
投票結果は、同性婚法への議会の支持を示しているというものの、クレティエン首相の与党である自由党が、下院で170議席を持っていることを考えると、こと同性婚となると、与党の間でも意見が分かれているわけで、議論はより活発化している。
決議を出したグループのリーダーであるスティーブン・ハーパーは、「ゲイの結婚を市民権問題として表現する試みには、嫌悪感を覚える」と述べた。
これに対し、法務大臣のマーティン・コーションは、この意見を否定し、「同性同士の結婚は市民権問題でなかったというが、偏見のために女性が参政権をもてなかったのは、さほど昔ではなかったことを考えてほしい。これは、全てのカナダ人にとって、平等と尊厳の問題である」と反論した。
カミングアウトしたゲイの新民主党議員である、リビー・デイビーズは「誰も望まない人間と結婚しろなどと言っていない。今回の動きは、極めて同性愛嫌悪的だ」と言う。また同じ新民主党のスヴェント・ロビンソン議員は、反対派に「私と私のパートナーであるマックスとの関係より、あなたたちの結婚の方が正当だ、などとどうして言えるのか?」と迫った。
ケベック連合(政党名)の議員たちも、保守派を同性愛嫌悪だと指摘した。リアル・メナードは、次のように述べた。「まるで、娘に『私は、人種差別主義者ではないが、おまえに黒人と結婚してほしくない』と言っている父親のようだ。『私は、平等を重んじるが、おまえには働く権利があるなどと思ってほしくない』と妻に言っている夫、とたとえてもいい」
しかし、こうした議員グループだけではなく(さらに新たな決議を出す動きもある)、カトリック系のクリスチャンたちも様々な形で同性婚法を阻止する構えを見せている。自由党におけるクレティエンの後継者であるポール・マーティン(次期首相と目されている)も同性婚支持と意見表明しているが、自由党内部もまとまっておらず、来春の総選挙などもにらみつつ予断を許さない情勢が続くことになろう。
翻訳&記事の解説:伊藤 悟
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