アメリカで同性カップルが養子をとりやすくなる

by HIME

 
 

 10月末に発表された全米調査により、アメリカの養子斡旋機関は、同性カップルを親として選択する傾向が増えていることがわかった。

 この調査によると、斡旋機関の60パーセントが同性カップルであることを公表している応募者からの申請書類を受けつけており、40パーセントが実際に同性カップルに養子縁組を取り持っている。

 「家庭を必要としている子どもたちには、好ましい傾向だ。あたたかな愛情あふれる家庭を落ち着き先にできる可能性が高くなるのだから」今回の調査を実施した、エバン・B・ドナルドソン養子縁組研究所のアダム・パートマン所長は述べている。「ゲイ・レズビアンのカップルが養子をとりたい場合、想像しているよりも遥かにスムーズに実現するだろう」

 今回の調査は、全米307件(民間:277、公立:30)の斡旋機関を対象に実施された。同性カップルを親として選択するのは、公立や、民間では非教会系列、ユダヤ系、ルター系の斡旋所が多く、また特殊な状況(外国からの養子など)を扱う例も少なくない。

 また同調査では、5件に1件が、同性カップルの申請者を拒否したと返答している。25パーセントは、一度以上、同性カップルを親にしないよう生みの親から要請されたことがある、と返答。逆に、15パーセントは一度以上、同性カップルを親にするようリクエストされたという。

 「同性カップルは、異性カップルと同じように、健康で、落ち着いた、愛にあふれた子どもたちを育てられる」ことを証明する研究結果があるにもかかわらず、同性カップルの養子問題は、依然として議論の対象となっている。

 フロリダ州は、同性愛者が(個人でもカップルでも)養子をとることを禁止していて、ミシシッピ州では、同性カップルが養子をとることが禁止されている。ユタ州では、未婚のカップルが養子をとることは禁止されているため、同性婚が許されていない以上、実質的に同性カップルは養子がとれない。フロリダ州の禁止法令に関しては、ゲイの養親グループとアメリカ市民的自由連合から訴訟が起こされている。

 今回の調査は、養子を取り巻く状況が激変したことを示している、とパートマン所長は述べている。「養子斡旋機関の大半は、同性カップルの家庭が子どもにとって何ら問題のない環境だと認識し、信頼している。これは、画期的な変化であり、10年前には予想もつかなかった状況だ」

 また同調査から、同性カップルは、ある程度年がいった子ども、有色人種、障害のある子、HIVに感染している子など、「特別なケア」が必要な子どもを養子にとる率が高いことがわかっている。このような状況の子らを専門に扱う斡旋機関は、同性カップルからの申込書を受けつける確率が高い。また、外国からの養子を斡旋する機関の約7割が同性カップルからの申込書を受けつけている。

 「同性カップルの養子をめぐる動きは、議会やテレビでの討論のはるかに先を行っている。養子をとる同性カップル数の大幅な増加は、きわめて画期的であり、アメリカ社会の改変につながるだろう」とパートマン所長は述べている。

 なお、教会系列の斡旋機関には依然として強い反発が見られるが、それも減るだろうという見方が強い。

※同性カップルの子育てに関心のある方は、『男だけの育児』(ジェシ・グリーン=著/伊藤悟=訳)をぜひお読みください。どうして「特別なケア」が必要な子が同性カップルの養子になりやすいのか(要するに異性カップルがとりたがらない……)などさらに詳しい背景がわかります。

翻訳&記事の解説:HIME
(HIME:米国カリフォルニア州在住/翻訳スタッフ)

 

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