「同性カップルに与える権利」が
スペインの国政選挙で争点となる

by Nick

 
 

 新年を迎えてまだわずかな今日、スペインの2004年度選挙キャンペーンでは、各政党にとって「同性カップルに与える権利」が大きな争点となっている。国の新しい政府を決定するためのこの選挙は3月中旬に行われ、野党の社会労働党は、綱領の中に同性カップルへの権利を認める提案を掲げている。

 与党の国民党は、スペイン国内で強大な権力をもつローマ・カトリック教会に同調する形で、同性カップルへの権利を認めることには反対だ。

 スペインのローマ・カトリック教会の最高指導者であるアントニオ・マリア・ルーコ・ヴァレラ枢機卿は、マドリッドのアルムデナ大聖堂での演説で、同性カップルに同等の権利を与えることについて、激しい抗議を(社会労働党に)あびせた。

 枢機卿は、非伝統的な、片親だけの家族や同性愛者のカップルに、伝統的な家族と同じ権利を与えることになる社会労働党のプランを強く非難した。とりわけ同性愛者のカップルに対しては「子どもを持つという、人間としての自然な能力を持ち得ない連帯の形」と言い放った。

 枢機卿は、「そのようなプランは、社会秩序の崩壊以上のものをもたらす『劇的な影響』を社会に与えることになるだろう」と述べた。

 クリストバル・モントロ財務大臣も、枢機卿の意見に同調し、「結婚しているカップルと結婚していないカップルに同じ権利を与えれば、過剰な公共投資を引き起こし、経済成長と雇用創出に悪影響を与えかねない。(社会労働党のプランが実現すれば、)『失業者だらけの社会』を創り出してしまうかもしれない」と主張した。

 社会労働党員らが、財務大臣のコメントを「愚かで狭量な男振り」と称したのに対して、Spanish Federation of Lesbians, Gays, Transsexuals and Bisexuals(FELGT:スペイン・レズビアン/ゲイ/トランスセクシュアル/バイセクシャル連盟)は、政府が「(極度に伝統を重視して保守的な)『高潔主義』のローマ・カトリック教会に押し付けられた『不寛容な社会を推進』しようとしている」として、政府を非難した。

 FELGTは、納税を一時的に拒否するという、「国庫収入への不服」と称するキャンペーンを計画していると政府に脅しをかけている。FELGTのスポークスマンは、「我々がもし二流市民だとしたら、一流市民の税金を払う必要はない」と言明した。

 あるキリスト教のゲイとレズビアンの団体は、「枢機卿は『嘘だらけの』お説教を公共の場で行なって『バカな姿』をさらけだした」とコメントを発表し、国民党内のゲイ団体、Popular Platform(国民プラットフォーム)は、枢機卿の発言は性的指向による差別にあたるとして、訴訟を起こしている。

 同性カップルに権利を与えることを支持しているのは、社会労働党員らに加えて、他のいくつかの左翼の野党団体と、与党の国民党員の一部だ。

 連邦政府が一歩も譲らずに同性同士の関係を認めるのを拒絶しているのに対して、スペインの地方自治体は、もっとリベラルである。スペイン北西部のガリシア地方では、最近、法律が改正され、既婚のカップルと未婚のカップルに同等の経済的、社会的な権利が与えられるようになった。

 スペイン北部のアラゴン地方では、近郊のナヴァラ地方、バスク地方とともに、同性カップルが養子を取ることを認めるかどうかの投票を、最近行なったばかりだ。だが、先週(2003年12月第4週)の試訴(新判例をうち立てることを目的にして試験的に行なわれる訴訟)では、連邦政府は同性カップルによる養子の問題を、憲法裁判所へと持ち込み、そこでは「連邦政府だけが、誰が養子をとることができるかを決めることができる」、という判決が下された。

 それでも、北東部のカタロニア地方と、深南部のアンダルシア地方では、同性カップルが養子を引き取り育てることが認められている。

翻訳&記事の解説:Nick
(Nick:東京都在住/翻訳スタッフ)

 

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