ベルギーで結婚に続き、同性カップルの養子縁組の可能性

by ワタル

 
 

 ゲイフレンドリーな国の筆頭に挙げられるベルギーでは、もうすでに、子どもを養子にする権利を同性カップルに与える準備ができている。ヨーロッパの国で2番目に同性愛者の婚姻を合法化してから、わずか数ヶ月後という速さだ。

 ベルギー議会の連立与党によると、政府は、今までレズビアンやゲイの人々が子どもを養子にしたり、親になることを妨げてきた法律をなくそうとしているとのこと。

 「もうすでに、同性カップルやバイセクシャルカップルの養子縁組を許可している国での調査研究や実践経験で、子どもが同性カップルの親に育てられても、否定的な影響を受けないということは証明されています」と VLD 党は公式ホームページで声明文を発表している。VLD は、ギー・ヴェルホフスタット・ベルギー首相率いる、フラマン自由党である(注)

 この法律は今年2004年中に議会を通過する見通しだ。首相によると、法案の草稿は今年度上半期中に書かれるとのこと。

 National Center for Lesbian Rights(全国レズビアン権利センター)のスポークスパーソン、シャノン・ミンターさんは、「ベルギーはとても素晴らしい第一歩を踏み出しました。ベルギーでの決議は喜ばしいことであり、養子縁組の法律を現代化するという待ちに待ったステップです。調査研究によれば、性的指向は親としての能力には関係ないこと、そして、レズビアンやゲイのカップルに育てられた子どもも、異性愛者の親の子どもと同じくらい健康に育ち社会に適応して生きていけることが、わかっています」と語った。

 ヨーロッパでは数カ国がすでに同性カップルの養子縁組を認めており、カナダの数州と豪・西オーストラリア州でも同様の法令がある。

 アメリカでのゲイやレズビアンの養子縁組法は、州や郡によって異なる。

 フロリダ州では、ゲイやレズビアンによる養子縁組を全面的に禁止している。他州では大体郡の判事に決定権があるので、それぞれ異なっている。いくつかの州では、同性カップルにセカンドペアレント養子縁組(養子を取った親のパートナーにも子どもを養子にする権利)を設けている。

 昨年11月、National Center for Lesbian Rights は、カリフォルニア州地裁に Adoption.com を相手取って訴訟を起こした。全米最大のインターネット上で養子縁組ビジネスを行っている同社が、このサービスを同性カップルに提供するのを拒否したためだ。

 ミンターさんは「今回は、レズビアンやゲイに対する営利目的の養子縁組サービスの差別にチャレンジする、最初の訴訟となるでしょう。同様に、インターネットビジネスにおける反ゲイ差別にチャレンジするのも初めてのことです」と語った。

 同性カップルの養子縁組法に関しては、ベルギー議会でも反対意見があるが、この動きに賛成する勢力が票数で上回っており、法案が通過することが見込まれている。

 同性愛者の婚姻に反対していた3党、Francophone Liberals(フランス系自由党)、極右の Vlaams Blok(フラームス・ブロック)、Francophone Christian Democrats(フランス系キリスト民主党)は、ゲイの養子縁組にも反対の投票をするとしている。しかし、常に同性愛者の法令を支持してきた Socialists(社会党)と Greens(緑の党)の賛同もあり、議会では養子縁組法案が過半数で通る見通しだ。

 ベルギーの人口1000万人のうち、75%はローマ・カソリックだが、最近はその保守的な伝統の殻を破って、ヨーロッパでも筆頭のリベラル国家になった。2001年には大麻(マリファナ)の個人使用を、2002年には安楽死を合法化してきた。

 そして昨年2月には、同性カップルに異性カップルと同様の法的地位を与え、法律が施行された6月には最初の同性愛者の婚姻が行われた。

 米国メリーランド州とほぼ同面積のこの小国は、フランスとオランダの間に位置していて、首都のブリュッセルには EU と NATO の本部がある。

※注 ベルギーは、多民族・多言語国家で、主なものは、オランダ語に近いフラマン語と、フランス語に近いワロン語で、政党も言葉の系統によりふたつに別れているものが多い。例えば、フラマン(オランダ系)自由党と、フランス系自由党、など。

翻訳&記事の解説:ワタル
(ワタル:埼玉県在住/翻訳スタッフ)

 

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