サンフランシスコ市同性婚許可〜その後の状況

 
 

 サンフランシスコ市が同性カップルに結婚許可書の発行を開始したことで、全米が沸騰している。

 サンフランシスコでの同性カップルの結婚登録の波は衰えることなく、16日の月曜日だけで825組が登録、トータルで2464組に達した。これは、一日平均の登録数(もちろん今までは異性間)が25〜30組だったことを考えると最高新記録だろう、と市の担当者は、『Wow!』と言いながら述べた。前日の夜から雨の中で、寝袋持参で市庁舎の前に泊まり込んだカップルも、数百組いた(火曜日には市当局が通常の受付体制に戻したので数十組に落ち着いた〜水曜には約2700組に)。

 これに対して、この発行を無効だとする保守的な勢力が、2つの訴訟を起こしている。The Campaign for California Families(カリフォルニア家族キャンペーン)と、the Proposition 22 Legal Defense and Education Fund(提案22を護り教化する基金〜「提案22」は、2000年3月の住民投票で承認された、州が認める婚姻は異性間のみで、州外で同性婚をしても認めないという条例)によるものである。

 17日の火曜日午前11時、サンフランシスコ郡上級裁判所判事ロナルド・クアイダチャイ氏は、前者の訴えを受け、市当局に対して、(訴えた側が期待した「非常時」としての)即時的な指示は行わず、金曜日に聴聞を行うことを決定した。ロナルド氏は、「非常時」にはあたらないので、裁判所としてじゅうぶんに準備して判断したいとの意向を述べた。

 後者の訴えを担当した、ジェームズ・ウォーレン判事は午後2時に、すでに金曜日に(即時命令を拒否して)指示してあった、提訴者と市当局の両者からヒアリングを行った。その上で、ウォーレン氏も、即時的な指示は行わず、すでに発行された結婚許可書も無効とせず、かわりに3月29日に、市当局に、今回の結婚許可書発行の根拠を示すように命じた。

 サンフランシスコ市長のギャビン・ニューソム氏は、裁判所から停止命令が出ないかぎり、許可書の発行を続けると宣言した。また、今回の措置で具体的な被害を受けていないのだから、即時停止はありえない、逆に許可書の発行を停止すれば同性カップルが被害を受けることになる、とも主張している。提訴側は、即時停止命令が実現しなければ、州最高裁への上訴も辞さないとしている。

 18日、ブッシュ大統領は、サンフランシスコ市の措置に反対する意見を表明した。「私は、一貫して男女間の結婚を保護する法律を支持している。今回の事態は、私の今後の決定にいい影響は与えないだろう」。まだ、連邦憲法を改正して結婚を異性間に限定するところまでは言明していないが、ブッシュ夫人のローラさんは、サンフランシスコの事態を「とてもとっても衝撃的」と呼び、マサチューセッツ最高裁とサンフランシスコ市長を暗に非難するコメントを出している。

 カリフォルニア知事アーノルド・シュワルツネッガー氏も、17日に、今回の措置に反対であると声明を出している。「市当局は、〈提案22〉を守ってほしい。すでに、同性カップルに結婚しているのにほぼ等しい権利を与えるドメスティック・パートナー法があるわけで、私はそれを支持・推進する」。

 さらに18日には、カリフォルニア州当局が、形式が変更された結婚許可書は認められない、と発表した。実際、サンフランシスコ市は、今回の措置のために、市長の指示に基づき、許可書の「新婦」と「新郎」となっていた部分を「申請者1」「申請者2」に変えている。許可の文言の中でも「未婚の男女」が「未婚の個人」と置き換えられている。この点を盾にとって、州当局は変更された結婚許可書は認められない、全州同じでなければならないとしている。ニューソム市長は、場合によってはこの件に対して法廷闘争も行う、と決意していると伝えられている。

 こうした展開に対して、過激すぎて反動を起こし、かえって、マサチューセッツ州などの同性婚実現にマイナスになる可能性もある、とみるLGの活動家もいる。マサチューセッツでは、議会で、結婚を男女間に限る州憲法改正案が提出されており、激論が続いている。ただし、州憲法改正には、議会を通った上に、住民投票による承認も必要で、その成立以前に、マサチューセッツ州最高裁の命令による同性婚法が成立する予定だ。

 もちろん、サンフランシスコの動きを支持する勢力もたくさんある。シカゴのデイリー市長も、18日の記者会見で「(同性愛者たち)は、誰かの息子または娘です、誰かの母または父です。私は、彼女/彼らと人生をともにしてきました。私たちは、彼女/彼らが、家族または「拡大家族」の1区画を占めることを理解しなければなりません。彼女/彼らは、彼女/彼らが持ちえていない利益を持つべきです」と述べて、強い共感を示した。

翻訳&記事の解説:伊藤

 

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