結婚している異性愛者と同じ法的権利を同性カップルにも保障する法案が、この4月にアイルランド議会上院に提出される予定だ。今回の発案の発起人は、同上院で唯一の同性愛者であるデイビッド・ノリス議員(60)だ。ノリス議員は、自らの20年間にわたる上院での議員生活において、今回の法案提出は最大の山場だと述べている。
今回のドメスティック・パートナーシップに関する法案は、同性愛者の権利を擁護することをその目的としているのみならず、登録を済ませた未婚の(入籍せずに同棲している)異性愛カップルの権利も保障しようとしている。ノリス議員はこの法案を4月の早い段階で提出する予定で、それほど大きな問題はなく承認されると見込んでいる。同法案は、すでに超党派の支持を集めている。
ノリス議員は次のように述べている。「相続権のような財政的な利益という点で、ゲイやレズビアンのカップル、そして未婚の異性愛者のカップルは、未だにこの国では不平等な扱いを受けています」。
議員は続ける。「例えば、成人してからずっと一緒に暮らしている同性愛者のカップルについて考えてみましょう。もし2人のうちのどちらかが亡くなった場合、そのパートナーが長く人生を共にしてきた愛する人の年金を相続する権利が現在では保障されていないのです。不動産に対する抵当権についても同様のことが言えます。つまり、抵当権を設定できる人(簡単に言えば不動産の所有者)がもし死亡した場合、そのパートナーは相手の不動産を相続することが、現在の法律ではできないのです。これは本来保障されるべき権利の不当な侵害です」。
そして、愛する人が瀕死の病床に伏した時、彼の長年のパートナーが見舞うのを拒まれたというケースもあることを指摘して、ノリス議員は次のように話した。「私は、愛する人に会いに行った彼のパートナーが、相手の家族に面会を許されなかったというケースに何回もかかわったことがあります。このような問題が起こるのは、彼ら2人が法律上は親族ではないため、死に直面した時でさえ法的権利は何ら保障されていないからなのです」。
ノリス議員はまた、国内の同性愛者が外国人のパートナーをアイルランドに呼び寄せることができないことにも触れ、次のように述べている。「今日アイルランドには、南米出身の同性愛者がけっこういます。私の知り合いにもパートナーが南米出身の人がたくさんいますが、彼/彼女らのパートナーシップが法的に認められていないために、外国人のパートナーを合法的にアイルランドへ呼び寄せる権利が同性愛者には保障されていないのです。もちろん、このような権利は異性愛者の人々には保障されています」。
カトリックの司教たちが今回の法案に反対することが予想されるが、アメリカの同性婚に関する論争ほど今回のアイルランドの問題は加熱しないであろう、とカトリックの評論家たちは見ている。アイルランドで影響力のある雑誌『Irish
Catholic』の編集者サイモン・ロウは、今回の同性パートナーシップにまつわる問題が、カトリック教会の怒りの矛先になることはないだろう、と述べている。
以前はとても考えられなかった自由を享受している若い世代の同性愛者たちは、今回の法案は多くの人々の支持を受けるものだろうと予想している。『ゲイ・コミュニティ・ニュース』の編集者であるブライアン・フィネガンは、次のように話す。「私が考えるに、アイルランドの大多数の人々が同性愛者に対して寛容です。ゲイもレズビアンも、この国でますます社会的に受け入れられ、カミングアウトするようになってきている」。フィネガンはこう続ける。「多くのゲイやレズビアンが政党政治や政治思想にそれほど聞く耳を持ちませんが、ノリス議員の運動は、最も政治に無関心な人々にさえ関心を持たれ、支持されています。今回の法案が可決され、新たな法律が施行されれば、それはゲイやレズビアンが自らの市民権をもう1つ勝ち得たことになるでしょう」。
たった10年前まで同性愛が違法であったアイルランドにおいて、今回の法案は特に重要だ。無所属議員であり、学者でもあるノリス議員はこう述べている。「1993年、同性愛者であることはまだ法に反することでした。当時と比べると、私たちはアイルランドの解放を目指して、すでに長い道のりを歩んできたのだと思います。この最後の闘いは、建設的な目標に向かいながら私の政治生活にピリオドを打つにはすばらしいチャンスです」。
アイルランド政府が今回の法案に反対した場合、60歳のノリス議員は、定年退職後も最後の闘いを継続することを誓っている。議員はこう話す。「政府が今回の法案の通過を妨害した場合、残る手段はただひとつです。それは、反対する者全員を欧州人権裁判所に引っ張っていくことです」。
翻訳&記事の解説:斎藤
(斎藤:群馬県在住/翻訳スタッフ)
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