全米の同性愛者の間で
クアーズ(ビール)のボイコットが広がる

 有名なアメリカのビール、クアーズがボイコットにあっている。ことの始まりは、クアーズの前社長(4代目)、ピーター・クアーズが、5月24日、同性婚禁止のための憲法改正を支持したことだ。共和党のピーター・クアーズは、コロラド州からの立候補をめざし予備選を勝ち抜くために、立候補予定者の討論会で自分の立場を明らかにした。

 最初にすぐに反応したのは、シカゴのバーやクラブのオーナーたちで、24日の直後から、クアーズの仕入れをやめ、シカゴのゲイ・コミュニティで著名な人物とともに、地方紙に「本当は何を買っているのか?」と題する広告を出した。広告では、ピーター・クアーズ批判だけでなく、クアーズ・ファミリーの他のメンバーによって同性愛嫌悪的な右派への支援が続いていたことが示されている。ボイコット運動のサイトもいち早く作られてアップされている。この動きは全国へ広まりつつある。

 これに対してクアーズ側は、6月3日に「ピーター・クアーズの見解は、彼個人のものであり、会社のものではない」という声明を発表して、ピーター・クアーズと距離を置いた。さらにCEOレオ・キーリーは、「法律によってであれ何であれ、私たちは、ゲイ/レスビアン/バイセクシュアル/トランスジェンダーのコミュニティに対する差別を支持しない」と述べた。とは言え、クアーズのサイトには、まだピーター・クアーズの写真やメッセージが残されている。

 いくら一族のピーター・クアーズが、5日の予備選で共和党の指名を得るために党内最右派(同性婚反対)の支持を必要としている(そうしないと勝てないという予想がある)からといって、会社としては、もうこれ以上のボイコットを受けるわけには行かないというところだ。

 クアーズは、かつて、同性愛者に、大規模なボイコットを受けたことがある。

 クアーズは、1970年代に、就職面接で、志望者のセクシュアリティを尋ねる時にウソ発見器まで導入して、同性愛者を排除していた(実際全く雇われなかった)。これに対して、サンフランシスコの市政執行委員ハーヴェイ・ミルク(カミングアウトしたゲイとして初めて当選した)が、この仕打ちに抗議して、クアーズ製品のボイコットを始めた。

 このボイコットは、全米に広がって、会社に数百万ドルの損失を与えた。それ以来、クアーズは、同性愛者のコミュニティとうまくやっていく努力を続けてきた。それは、クアーズで働く、パートナーがいる同性愛者の権利まで認めるところまで広がり、5年前には、同性愛者の市場拡大のために、レズビアンであることをカミングアウトしているメアリー・チェイニーを雇った。彼女は、2000年の大統領選挙では、副大統領候補の彼女の父親ディック・チェイニーの運動を会社に手伝わさせている(当選した・現副大統領)。皮肉なことに、こうした変化を推進し、会社をゲイバーまで出向いて行って営業をするほどにまでしたのは、ピーター・クアーズだった。

訳&記事の解説:伊藤

 

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