米トニー賞でLGBTが続々受賞

 米ブロードウェイの優れた演劇・ミュージカル・出演者に贈られる第58回トニー賞が、6月6日夜発表され、ミュージカル部門・最優秀作品賞に、ふたりのゲイの恋愛をストーリーの軸に置いた「アベニューQ」が選ばれた。

 この部門で本命と見られていたのは、「オズの魔法使い」に題材を取った「ウィキッド」だったが、人形とそれを動かす俳優がいっしょに登場する、「セサミ・ストリート」のパロディである「アベニューQ」が、「大番狂わせ」で選出された。大がかりな舞台装置など、資金をたくさん投入した「ウィキッド」に対して、「アベニューQ」が低予算で作られたことにも注目が集まっている。「アベニューQ」は同時に、最優秀脚本賞・最優秀音楽賞も受賞した。

 今回のトニー賞ではこの他に、ゲイの劇作家ダグ・ライトが書いた「アイ・アム・マイ・オウン・ワイフ」(=「私は、私自身の妻だ」)が演劇部門・最優秀作品賞を獲得した。ナチス政権下と旧東ドイツを生きた実在のトランス・ヴェスタイト(異性装者)、シャーロットの実体験に基づくもので、ダグ・ライトは、すでにシャーロットの奮闘の真実を展示・紹介して、ピューリッツァー賞を受賞している。そして、主演のジェファーソン・メイズも、彼女を見事に描写して、最優秀主演男優賞をとった。

 さらに、カミングアウトしているアーティスト、スティーブン・ソンドハイムは、「アサシンズ(暗殺者たち/大統領暗殺犯9人の物語)」で、ミュージカル部門・最優秀リバイバル作品賞を得た。そのディレクター、ジョー・マンテロには最優秀演出賞など、出演したマイケル・セーベリスには最優秀助演男優賞が与えられているほどの評価の高さだ。

 また、授賞式の司会をつとめた人気俳優、ヒュー・ジャックマン(オーストラリア出身、「X−MEN」でハリウッドデビュー)にも注目が集まった。彼がミュージカル「ボーイ・フロム・OZ」で、実在のゲイのシンガー・ソングライター、ピーター・アレンの役を演じていたからだ。彼は、ミュージカル部門・最優秀主演男優賞も獲得した。「アベニューQ」でクローゼット(カミングアウトしていないで異性愛者のふりをしている)なゲイの銀行員/共和党員であるロッドの人形が登場して、ジャックマンを流し目で見た時、会場は当日最高の湧き方を示した。

 ミュージカル部門・最優秀助演女優賞を獲ったアニカ・ノーニ・ローズが出演した作品は「キャロライン・オア・チェンジ」だが、この作品は、レズビアンであることをカミングアウトしていて、「エンジェルス・イン・アメリカ」の脚本を書いたトニー・クシュナーの最新作である。

 「GLAAD:中傷と戦うゲイ・レズビアン同盟」のメディア部門責任者、グレンダ・テストーンさんは、今回のトニー賞に関して、「ゲイ/レズビアンの人たちにとって、長い間劇場は、まるで我が家のようなところでした。アメリカの他の部分にも、追いついてもらう時期です。トニー賞のような場で、こういう形で多様性に栄誉が与えられることは、すばらしいことだと思います」とコメントした。

 昨年のトニー賞で、「ヘアスプレー」がミュージカル部門・最優秀作品賞を受賞した際、同性の作曲家同士がキスをしたことが話題になったが、今年のトニー賞に至っては、ほとんどの主要部門にLGがからんでおり、LGへの正当な評価が定着した形となった。

 ちなみに、朝日新聞8日朝刊にも、このトニー賞の記事が掲載されているが、「黒人女優の活躍が目立った」とは書かれていても、ゲイ/レズビアンの活躍には一言もふれていない。また、ストーリーにゲイが登場することも全く書かれていない。どうして無視されてしまうのか、全く解せない。ちなみに、読売・毎日の各紙も同様である。

訳&記事の解説:伊藤

 

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