ジャマイカを代表するゲイの人権活動家が自宅で刺し殺された事件について、地元の同性愛者の団体は、これがホモフォビア(同性愛嫌悪)による殺人だとして非難した。
ブライアン・ウィリアムソンさんは6月9日、自宅のキングストン・アパートメントで首に数箇所の刺し傷を負っているところを、帰ってきたルームメイトに発見された。ウィリアムソンさんは血まみれの中、うつ伏せで倒れていた。
今のところ、地元警察はこの事件がホモフォビアによるものではないとしており、彼の金庫がなくなっていることや、アパートが荒らされていることから、強盗事件が悪化したものとしている。事件前にウィリアムソンさんのアパートにいたとされる2人の男が、事件に関与しているとして指名手配された。
しかし、「ジャマイカ・フォーラム・フォー・レズビアンズ・オール=セクシュアルズ・アンド・ゲイズ(J-FLAG)」のスポークスパーソンは、ウィリアムソンさんの遺体の状態や、彼がジャマイカでもっとも有名な「姿が見える」(カミングアウトしている)同性愛者であることから、この事件をヘイト・クライム(憎悪犯罪)だと考えている。
同団体は、ウィリアムソンさんは「ジャマイカでもっとも勇敢な人権活動家の一人だった」と語った。
ウィリアムソンさんはJ-FLAG の設立者の一人であり、ジャマイカで唯一のこの同性愛者団体は、1998年に同国のソドミー法を覆す目的で始まった。この努力は結果的に実らなかったが、J-FLAG
の活動は続き、ウィリアムソンさんは「姿が見える」公的なスポークスパーソンとして、ゲイに対する人権意識の向上を目指して実名でテレビに出演していた。
この殺人はアムネスティ・インターナショナルが、性的多様性に対するジャマイカの姿勢を酷評するレポートを発表したわずか数日後だった。
J-FLAG では、その同性愛嫌悪の態度で周知になりつつある同国に対する国際的なアクションを呼びかけている。アムネスティ・インターナショナルでも、同性愛を犯罪の枠から即座にはずすよう、ジャマイカの首相、P・J・パターソン氏に要求している。首相は、法改正を進めるつもりはないとコメント。
ジャマイカは、国際的な人権団体からゲイに対する不寛容さを何度も指摘されてきた。同性愛者の性行為は法律で禁止されており、政府はLGBT コミュニティに対する暴行犯罪を放置していると非難を受けている。
「私たちは、同性愛者であると疑われて、周りから中傷されたり脅迫されたり攻撃されたりして、自分たちのコミュニティを去らざる負えなくなった人たちの話を聞いてきました。彼らは、ホームレスの生活を強いられたり、孤立したり、さらに悪い状況に直面しています」とアムネスティ・UK [イギリス]のメディア・ディレクターのレスリー・ワーナーさんは指摘する。
「このレポートが単に氷山の一角であることを危惧しています。ジャマイカのゲイやレズビアンは、官憲のところへ行って助けを求めることなど怖くてできないのです」
J-FLAG によると、1997年から少なくとも30人のゲイ男性が殺害されたとしている。2月には、あるティーンネイジャーが、その子の父親が笑いながら見物する中、学校のいじめっ子に殴られるという事件が起き、その少年がゲイであることが後にわかっている。
ジャマイカの音楽であるラップやレゲエは、頻繁に同性愛者に対する暴力を煽るような歌詞を含んでおり、イギリスでは、人権擁護リーダーのピーター・タッチェルさんが、それらのアーティストや音楽配給会社を相手取り、ヘイトクライムであると訴訟を起している。また、反同性愛の歌を発売したミュージシャンは、アメリカとイギリスではボイコットに遭っている。
翻訳&記事の解説:ワタル
(ワタル:埼玉県在住/翻訳スタッフ)
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