アメリカ合衆国の「42の州では、LGBT(訳注:Lesbian,
Gay, Bisexual, Transsexual・Transgenderの略)の生徒は学校で全く保護されていない。LGBTの生徒にとって本当に『安全』だと言える州は2つしかない」と、GLSEN
(ゲイ/レズビアン/ストレート[異性愛者]教育ネットワーク)は、6月28日に発表した報告書で指摘している。
報告書では、差別禁止に関する州法の有無、学校における安全に関する州法の有無、学校における安全に関する地域の政策、セクシュアリティとセイファー・セックスについての教育・支援の有無、教育の質(生徒と教師の割合、卒業率など)、LGBTを差別する法律が州に存在するかどうかという6つの観点から、合衆国全ての州50州とコロンビア特別区の政策に成績がつけられている。
報告書によると、最も成績がよかったのがニュージャージー州、ついでミネソタ州で、合衆国の州の中でこの2州以外にAランクが与えられた州はなかった。42州が、「不可」またはFランクとなり、合衆国中最下位の51位はミシシッピー州で、100点満点でマイナス3点だった。
GLSENは、特に、学校が学校の中のLGBTの問題やLGBT自身について肯定的な記載をすることを制限している法律がある州にはマイナス点を与えている。マイナス点を与えられた州は、アラバマ州、アリゾナ州、ミシシッピー州、オクラホマ州、サウスカロライナ州、テキサス州とユタ州だ。
幼稚園から高校3年生までの生徒のうち、学校における安全に関する法律で保護されている生徒は全体の25%にも満たない。州全体で性的指向(sexual
orientation)による差別から生徒を法的に保護しているのは、カリフォルニア州、マサチューセッツ州、ミネソタ州、ニュージャージー州、ヴァーモント州、ワシントン州、ウィスコンシン州のたった7州とコロンビア特別区(計8つ)だけである。ジェンダー・アイデンティティ(自分を女性と認識するか、男性と認識するか/ほぼ「性自認」と同じ)に対して保護を与えている州は、カリフォルニア州、ミネソタ州、ニージャージー州だけである。合衆国の幼稚園から高校3年生までの生徒約4770万人の75%以上が、州全体で性的指向およびジェンダー・アイデンティティを保護の対象とせず、連邦法により保護が求められている宗教・人種・国籍のみを保護の対象としている学校に通わされている。
現在、フロリダ州、ケンタッキー州、ルイジアナ州、メリーランド州、ミシンガン州、ニューヨーク州、サウスカロライナ州の6州が、学校での差別および嫌がらせを禁止する法律を制定することを検討している。しかし、これら6州のうち、ジェンダー・アイデンティティに関する文言を法律に盛り込むことを検討しているのはたった4州だけである。
GLSEN代表のケビン・ジェニングスは、報道発表の際、「この報告書は、学校における安全を提唱する人々の多くが恐れていること、すなわち、性的指向およびジェンダー・アイデンティティを理由とするいじめや嫌がらせが例外的なこととしてではなく普通に行われている環境を変えるために、学校が必要とする政策を作り、計画的な支援を学校に与えることを合衆国の為政者たちが怠っている、という事実を浮き彫りにしている」とコメントした。GLSENはすでに、昨年の調査で、学校における安全に関する法律によって、LGBTの生徒の安全性が確保されて出席が増える、というつながりを明らかにしている。
立法および政策の変更を通じて、学校内での嫌がらせや差別をなくすよう努力し始めた州や学校区は増えてきているが、合衆国の学校で浸透している性的指向およびジェンダー・アイデンティティに基づく嫌がらせや差別に対応するにはまだまだ立法や政策の数が少ないと、報告書は指摘している。LGBTの生徒5人のうち4人が、友だちから同性愛を嫌悪する嫌がらせを受けたと報告している。また、LGBTの生徒の83%が、このような嫌がらせに気づいた教員や学校のスタッフが嫌がらせを止めに入ることは全くない、あるいはめったにない、と述べている。
「教室では、忠誠の誓い(※)よりもファゴット(訳注:男性同性愛者の蔑称)という言葉のほうがよく耳にするし、LGBTの生徒の39パーセントが性的指向を理由に身体的な暴力を受けている。学校も州も何の対策もとろうとしない」と、ジェニングスは続ける。
※訳注:合衆国の大半の小中学校で、始業時などに国旗=星条旗に向かって起立し、右手を胸にあてて斉唱される。文言は「私たちは神の下に一つになった自由と正義の国、合衆国に忠誠を誓い
ます」という内容。「神の下に」の部分が信仰の強制になると、裁判や論争が起きている。
合衆国の学校の「環境」に関する、昨年、2003年度の調査結果によると、法律による保護をほとんど受けていない年代の若いトランスジェンダーは、トランスジェンダーではない年代の若い、レズビアン/ゲイ/バイセクシュアル以上に、身体的暴力や言葉による嫌がらせを受けている。
GLSENの公共政策担当ディレクター、ネイル・ボムバーグは、28日、「この秋の選挙運動に向けて国が準備に入っており、今こそ、地域、州、国の立候補者は、現職もそうでない立候補者も共に、合衆国の学校に浸透している暴力、偏見、嫌がらせの解決に、自らが取り組んでいることと自らの立法政策案について明確に見解を述べるべきだ」と指摘した。
▼各州の成績ランキングは以下のとおり。
1位 ニュージャージー州
2位 ミネソタ州
3位 ワシントンDC(コロンビア特別区)
4位 ヴァーモント州
5位 カリフォルニア州
6位 コネティカット州
7位 ウィスコンシン州
8位 マサチューセッツ州
9位 ロードアイランド州
10位 メリーランド州
11位 ネバダ州
12位 ワシントン州
13位 ニューヨーク州
14位 ニューハンプシャー州
15位 アラスカ州
15位 ハワイ州
17位 ニューメキシコ州
18位 アイオワ州
19位 メイン州
19位 ヴァージニア州
21位 フロリダ州
21位 イリノイ州
23位 ペンシルバニア州
24位 デラウェア州
24位 テネシー州
26位 ミズリー州
26位 ノースダコタ州
26位 ウェストヴァージニア州
29位 オレゴン州
30位 カンザス州
30位 ワイオミング州
32位 ネブラスカ州
32位 ノースカロライナ州
34位 ジョージア州
35位 コロラド州
36位 ケンタッキー州
37位 ミシガン州
38位 インディアナ州
39位 オハイオ州
40位 サウスダコタ州
41位 サウスカロライナ州
42位 ユタ州
43位 テキサス州
44位 モンタナ州
45位 アーカーンソー州
45位 オクラホマ州
47位 ルイジアナ州
48位 アイダホ州
49位 アラバマ州
50位 アリゾナ州
51位 ミシシッピー州
翻訳&記事の解説:敦
(敦:東京都在住/翻訳ボランティア)
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