米国憲法修正案(同性婚禁止)
上院で実質的に否決

 7月14日、米国上院は、同性婚を禁止するための憲法改正案を「討論を終え採決にかける動議」(注)を、48対50で否決した[可決には60票が必要]。ブッシュ大統領と影響力のある保守派の応援も功を奏さず、採決に至る前に廃案となった。2月当初から先んじて熱心にこの改正案を支持していたブッシュ大統領にとって打撃になり、大統領選挙にも影響を与える、と見られている。

 (注)実際の提案そのものの可否ではなく、討議を打ち切り採決に行っていいかを決める動議。可決には60票が必要。否決されると廃案になり、次の正式な会期まで再提出はできない。したがって、大統領選挙までに上院で憲法修正が審議される可能性はほぼなくなり、ブッシュ大統領にとって、事実上の敗北といっていい。

 保守派は、この改正案が上院を通らなかったとしても、民主党の大統領候補ジョン・ケリー上院議員と副大統領候補ジョン・エドワーズ上院議員に、憲法改正反対の投票をさせ、それを「同性婚を否定していない」との明確な意志表明とみなし、選挙戦での攻撃材料にしようともくろんでいた。また、単純過半数はとれるとふんでいた。

 しかし、ケリーとエドワーズは、憲法改正反対の意志を会見で述べたものの、選挙遊説を優先し、投票の性質も手続き的で議論を尽くしてのものでないと判断し、今回の投票には加わらなかった。

 ケリーは、次のように述べている。「歴史を通して、我が国の価値と理想の基礎となる憲法を変えるというのは、極めて重大なことで、安易にやるべきではない。なのに、共和党員でさえ、この改正は政治的な利益のためだけに行われる、と公言しているものがいる。このような不毛な提案にかかわっている間に、我が国の安全を確保し、新しくよりよい仕事を創造し、最低賃金を上げて行く、といった重要な課題がないがしろにされていくのだ」。

 「人権キャンペーン」の代表チェリル・ジャックは、今回の結果を、「極右」と「分割の政治」の敗北、と表現し、共和党員をも分裂させる逆効果を呼んだ、と指摘した。

 「ログ・キャビン・リパブリカンズ」(共和党の同性愛者団体)代表のパトリック・ゲリエロは、「これは、原理の政治に対する勝利、希望の恐怖に対する勝利、そして、反ゲイ宣伝に対するリアルな家族観の勝利です」と語った。

 一方、憲法改正支持者たちは、まだ事は終わっていないと意気盛んで、改正案の再提出などを考えている。その根拠は、この秋、10数州[ジョージア、ケンタッキー、ミズーリ、ユタ、オレゴン、ミシガンなど]で、同性婚を禁止する州憲法改正の州民党票が行われる予定だからだ。また、共和党フリスト上院院内総務は、次の会期に、修正案を再提出する方針を示した。

訳&記事の解説:伊藤

 

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