米国カリフォルニア州最高裁判所は、8月12日、サンフランシスコ市長ギャビン・ニューサム氏が自分の権限を越えて、同性カップルに結婚許可書を発行した(州法違反)、と判断した。したがって、4000を超える同性カップルたちの「結婚」は無効になるという。ニューサム市長の州法違反については全員一致、結婚許可書の無効(判決文では、3月11日に禁止されるまでに発行された許可書は3995枚)については5対2で採決されたという。
この判決において、裁判官たちは、ニューサム市長の行動とその直接的結果に問題を限定し、同性婚が州憲法に違反するかどうかという点には踏み込んでいないことを明言した。
判決によれば、州法で結婚が「男性と女性との結びつき」と定義されている以上、2月12日に始まった市当局の指示による結婚許可書の発行は、あくまで法律違反ということになる。しかし裁判所は、カリフォルニアの州憲法が同性婚を許容するかという問題については全く触れなかった。そのかわりに、サンフランシスコ市当局という地方自治体が、州レベルの司法・立法を無視できるのかどうか、という狭い問題に絞って判断をした。
州最高裁判所長官ロナルド・ジョージは、「判決は、同性カップルが本質的に持つ法的権利には言及していない。現実問題として、私たちの前にある法的な問題は、公務員が、公務員として与えられる権限の限界を尊重して、自らの公務を遂行することを確認するという点において、あらゆる個人の利益に関係してくる」として、州法の合憲性に触れない理由を説明した。判決には、州法が改正されれば同性婚に問題はない、と書かれている。
結婚許可書を無効にすることに反対した2人の裁判官(州法の合憲性が判断されてから決定すべきだと主張した)のうちのひとり、ジョイス・ケナード裁判官は、「婚姻を異性間に制限している州法の合憲性は、別の裁判所で進行中の司法手続きを通して解決されるまで待つしかない」と述べた。
最高裁判所ビルの階段では、ウェディングドレスやタキシードを着たカップルも含め、10数組のゲイ&レズビアンカップルが判決を待っていた。結果を聞いて、泣き出すカップルもあった。
サンフランシスコで最初に結婚許可書を受け取った同性カップル、デル・マーティンさんとピュリス・ライアンさんは、落胆していた。ライアンさんは、「デルが83歳で、私は79歳です。50年以上いっしょに歩んできて、結婚という権利と保護が奪われるのは、ものすごい打撃です。私たちにはもう時間的余裕がありません」。
今回の判決は、保守的な団体と州司法長官ビル・ロキヤーが、ニューサム市長の行動の合法性を問うて起こした訴訟に対するもので、保守団体側は、「カリフォルニアに法の支配が回復した」と、またロキヤーは「同性カップルへの悪意から行動しているのではない。この判決は、法律を遵守しなければならないという公務員の義務の確認なのだ」と、語っている。
一方、各LG団体は、ニューサム市長の行動が同性婚運動を前進させ、ブッシュに過剰反応(連邦憲法改正による同性婚禁止の提案)までさせたことを評価し、LG団体およびニューサム市長が起こした、同性婚を認めない州法そのものが州憲法違反である、という訴訟がまだ続いていることに期待を寄せ、まだこれで終わりではない、と語っている。ちなみに、カリフォルニア州最高裁判所は、1948年にアメリカで最初に、人種による法的な結婚差別の廃止を命じた裁判所である。
サンフランシスコ市の弁護士デニス・エレーラは、「同性婚の合憲性が扱われれば、結局最終的に、ニューサム市長の潔白が証明されるだろう、それを信じている」と述べた。しかし、同性婚の合憲性に関する訴訟はその処理方法に関してまだまとまっておらず、州最高裁に行くまで、最低でも1年はかかるものと見られている。
そして、ニューサム市長は判決直後の記者会見で、「判決には失望した。4000の同性カップルは特にがっかりしただろう。どんな判決であれ、どんな政治家であれ、結婚式の瞬間を奪い去ることはできない。私は、4000のカップルを誇りに思う。時代は同性カップルの味方をする」と言った。
記事のまとめ:伊藤
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