米国ニュージャーシー州知事が
自分はゲイだとカミングアウトし、知事を辞職

by 井出

 ニュージャーシー州知事、ジェームス・マッグリービーは、12日の記者会見で自分は同性愛者であるとカミングアウトし、知事を辞職すると表明した。このあまりに突然で予想外の出来事に、アメリカ中が驚愕している。

 この出来事でマッグリービー知事は、アメリカ国内で政治的に最も高い地位にある、公に自分はゲイだとカミングアウトした政治家になった。知事は2001年11月の選挙に民主党から出馬し、初当選。2002年1月の就任以来、財政再建策として高額所得者を課税強化するなどリベラルな政策を推し進めていた。

 マッグリービー知事はその会見の中で、かつて彼のボディーガードであり安全保障補佐官であった男性と同性愛関係にあったと認めた。

 「真実は、私はゲイのアメリカ人である」と、マッグリービー知事は会見で自分の性的指向を明らかにした。その会見では、彼の現妻であるジーナ夫人と彼の父親であるジャック・マッグリービー氏といっしょに現れ、「大変恥ずべきことで、私はある男性と、妻を持ちながら、合意の上に大人の関係を持ってしまった。それは私が妻と築きあげてきた絆を破壊するようなことである」と話した。マッグリービー知事とジーナ夫人の間には2人の子どもがいる。

 ニューヨークのWCBSの報道によると、マッグリービー知事と関係があったとされる男性は、マッグリービー知事からセクハラを受けたとして、知事をその件で訴える事を計画しており、もし知事がその男性に多額の賠償金を払わなければ、知事の同性愛を暴露することも計画していたという。

 マッグリービー知事は会見で自分の感情こそ表さなかったものの、自分が子供の頃から自分の性的指向に疑問を持ち続けながら、「伝統的なアメリカの社会(異性愛中心社会)」に適応しようと、あらゆる努力をしてきたと明かした。

 「私は、幼少時代から現代まで、自分は他人とは異なっているという感覚を持ち続け、自分にこれ(同性指向)は自分が受け入れなければならない現実なのだと言い聞かせてきた。人は人生のある一定の段階で、自分の本質的な部分と向き合わなければならない。そして真実をありのままに自分で見つけ出さなければならない」。マッグリービー知事はこのように語った。

 マッグリービー知事政権は、この数ヶ月間「不正献金疑惑」のスキャンダルでマスコミを騒がしていた。マッグリービー知事は、この件に関する責任は全て私にあるとし、「私が知事を辞職するのは、私の今の状況により私自身や知事事務局をさらなる窮地に追い込まれるのを事前に防ぐためである」と話した。

 「私は自分の愛する家族に対して、苦しみや苦痛や苦悩を与えてしまった。私はこの会見を開こうか否か考えた。なぜなら、この問題は個人的な問題であり、公にするような典型的な問題ではないからだ」。マッグリービー氏は付け加えた。

 一方、このマッグリービー知事の突然のカミングアウトに対して、全米のさまざまな同性愛者支援団体からすぐに反応があった。

 ニューヨーク州でGLBT(ゲイ/レズビアン/バイセクシュアル/トランスジェンダー)の人々の権利を求めるグループ、「Empire State Pride Agenda (ニューヨーク州・ゲイプライド政策会議)」の代表、アラン・ヴァン・コペル氏は次のように語った。
 「彼の辞職劇は、クローゼットの中にいること(自分の性的指向を隠し異性愛者のふりをして生きざるを得ない状態のこと)が、人間にとって、どれだけ悲しく残忍なことかを象徴している。彼が47年間もの間、自分の性的指向を隠し続けて、辛い生活を送ってきたことはとても悲しいことである」。

 「人権キャンペーン」代表、シェリル・ジャック氏は、マッグリービー知事のカミングアウトを「とても勇気ある行為」と賞賛し、「私ども人権キャンペーンは、マッグリービー知事と彼の家族が、他の何百万ものアメリカの家族と同じように、社会に受け入れられるのを望んでいる」と付け加えた。

 なお、マッグリービー知事は、2004年11月15日付けで辞職する。

翻訳&記事の解説:井出
(井出:神奈川県在住/翻訳スタッフ)

 

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