9月30日、アメリカ下院は予想通り、同性カップルの結婚を禁じるための憲法改正案(共和党提出)を通過させることはできなかった。投票結果は、227対186で改正を認める議員が上回ったが、憲法改正に必要な、3分の2の賛成は得られなかった。[連邦憲法改正には、議会の両院で3分の2以上の賛成を得た後、各州の4分の3以上が批准しなければならない]
ブッシュ大統領は、2月、同性婚を禁じるための連邦憲法改正を促進するよう指示を出した。結婚制度の「神聖さ」を守るために、婚姻は、ひとりの男性とひとりの女性の間に限る、と定義しようというのだ。ブッシュ大統領は「否決は残念だが、この重要な問題が全米で議論されることを歓迎する」との声明を出した。
しかし、上院は、7月に今回と同様の提案を採決前に否決(「討論を打ち切り採決にかける動議」が否決された)、下院も通過の見込みがないのに強引に採決に持ち込んでいた。これは、近づいている大統領選挙を視野に入れ、同性婚否定の姿勢を堅持していることを示そうとしている、との見方が専らだ。LG団体は、結果を喜んでいるものの、この問題が、有権者を分裂させるだけの、大統領選挙の道具になっていることに危惧を抱いている。
下院では、共和党の同性愛者団体「ログ・キャビン・リパブリカンズ」のメンバー27人も、反対票を投じた。こうした事態は予想されたものなので、この時期の採決には、共和党内からも批判が出ていた。一方、この採決で同性婚問題に注目を集め、選挙戦を有利に戦おうと露骨に言明する共和党員もいる。事実、こうした投票があったということだけで、一部の保守的なキリスト教系団体は歓迎の意を示しており、政治的なメリットは存在している。
「人権キャンペーン」のシェリル・ジャック代表は、「議会は、通過して実現しそうもない、かつアメリカ国民の支持もない改正案のために貴重な時間をむだ使いした」と怒りをあらわにしている。
11月2日には、11の州で、同性婚の禁止を州憲法に盛り込むかどうかの州民投票が行われ、ほとんどで過半数の賛成が得られると見込まれている。LGたちの戦いはまだまだ終わっていない。
記事のまとめ:伊藤
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