おそい・はやい・ひくい・たかい
No.13

だれにもきけない話せないことをみんなで考える
先生のためのQ&A

 
 

 同性愛の相談を受けましたが……

「好意を寄せている男子生徒にどううちあけたらいいか?」という相談を男子生徒から受けました。生徒が私に相談してくれるなんてめずらしいのですが、こうした相談もはじめてで、とまどっています。
 性による差別はいけないとか、同性愛も否定されるべきではないということは頭でわかっているのですが……。どうしたらいいんでしょうか?

(愛知県・S 中学校男性教員)

 
 

 まず、あなた自身が同性愛に関して、正確な知識を持ってほしいと思います。同性を好きになることは、異常でも病気でもありません。国際精神医学会などでは30年前に治療の対象からはずされ、人間の個性の一部として認識されるようになっています。それどころか、ひとりの人間の中に同性指向と異性指向が一定の割合で存在していることがわかっています(これを「性的指向のグラデーション」といいます)。この割合は、自分の意思や選択で簡単に変えることはできません。
 詳しくは、『同性愛がわかる本』(伊藤悟著、明石書店刊)など同性愛に関する本を読んでください。ぜひ、しっかり学習して、あなたの内面で、同性を好きになっている子どもたちの存在そのものを受け入れて下さい。そして、同性が好きだという男子に、そういう自分を否定しないでいいということ、自分らしく生きていいんだ、ということを伝えて励まして下さい。
 そして、同性が好きな子どもたちは、異性愛が当然だと思い込んでそれを押しつけてくる社会のなかで、孤立しがちです。マスメディアが、同性愛者をいまだにお笑いの種にしていることもあって、同性が好きだと言うといじめられ、軽蔑されかねません。事実として、幼稚園の子どもでさえ、「ホモ」「レズ」「オカマ」が人をからかいいじめる言葉だと知って使っています。そのことも指摘するべきです。
 そうしたなかで、同性指向の子どもたちは、傷つくだけでなく、異性が好きだという演技を強制されることも少なくありません(たとえば、好きなタレントとして心外ながら異性のアイドルの名をあげたりする。そうしないと、仲間には入れないからです)。ですから、まわりの子どもたちにも、同性愛について、正確な情報を提供し、からかったりする対象ではないことを教えて下さい。
 そうした準備ができれば、あとは、一般的な恋愛となんら変わることはありません。うちあけた側には、断わられても自信を失わないようにしっかりフォローしましょう。うちあけられた側が同性指向だった場合には、自分の意志で判断するようアドバイスし、異性指向だった場合には、そのことで同性愛者およびうちあけた側に偏見をもたないように情報を提供し、話をしたうえで、「異性指向だから、恋愛感情を受け入れられない」とはっきり伝えるように言って下さい。
 2001年5月、法務省の人権擁護推進審議会も、救済の対象に、同性愛者をふくめる方針を出しました。世界的には、同性同士のパートナーシップが法律的にも認められつつある時代なのです。そうした新しい息吹を教室に吹き込んで下さい。

(伊藤悟)