米 調査結果が示すLGBTの世代格差

by 石田

 米国マサチューセッツ州、アマーストにある「ゲイ・レズビアン戦略的計画研究所(the Institute for Gay and Lesbian Strategic Studies)」は、LGBTコミュニティー間の世代間でのずれ[ジェネレーション・ギャップ]が年々顕著になりつつあり、そのような溝は埋められるべきだ、とした新たな調査結果を発表した。

 「現在では5年ほどで一世代が交代する」と、この調査に携わった研究者の一人、ジャニス・ボアン博士は述べた。ボアン博士は、LGBTの人々の成長期の過ごし方が急激に変わったため、今では5歳年上の世代が前の世代で何が起こったのかを完全に理解するのは困難だということを見いだした。

 共同研究者のグレンダ・ラッセル博士は「LGBTの若者と成人との面接調査を通して、世代間のコミュニケーションに注目すべき溝があることが分かった」と説明。そして「実際には大きく変化した今日の若者の生き方に、LGBTの大人たちは自分の過去の経験を重ね合わせて見る傾向があるようだ」と見解を示した。

 この調査の中ではこのような世代間の溝を表す例として、LGBTの大人たちによって同様の若者のために企画されたプロム(高校の卒業記念パーティー)を挙げる。このようなプロムは実際には若者が必要としているからではなく、むしろ自分の機会を逃してきた大人たち自身が必要としているために計画されたものと、研究者たちは考えている。

 同様に、多くのLGBTの若者たちが実際には問題なく生活しているが、LGBTの大人たちはそのような若者が直面する苦悩や孤立感に焦点をあてがちだと研究者は考える。ボアン博士は「大人が見ているのは問題を抱える若者だけ。苦しむこともなく、支援グループもあり、そして普通に過ごしているような若者たちが目に入っていない」と指摘する。

 また、違った側面としてボアン博士は、時に若いLGBTの人々が以前に何十年も続いた社会運動も知らずに、「差別に対し誰も何もしようとしていない」と批判している、と語った。

 ラッセル博士は「もし我々が若者と大人の両方の年齢層を配慮しなければ、我々が誰なのかということを示す重要な連続性や、歴史の継続的な理解によってのみ得られる教訓を失ってしまう危険がある」と今回の調査の重要性を説明した。

 「よかったのは、若者側も大人側も両方がお互いにまだ学び合うことができること」とボアン博士は語った。そして「LGBTの大人たちは進んで若者たちに続いていくべきであり、LGBTの若者たちはよき先輩として大人たちを意欲的に使うべき」と訴えた。

 若者はしばしば、(大人に比べると)過去の問題解決法に縛られることもなく、同性愛嫌悪の程度についての古い(そしておそらく間違った)仮定にも囚われもしない、斬新なものの見方をみせる、とレポートはさらに言及している。

 そして最後にレポートは、LGBTの大人たちはより多くの経験と情報資源を持ち、またLGBTの社会的な運動の歴史的根源[ルーツ]にもより通じている、と結論付けている。

 研究者たちは、こうした難関が世代を超えた交流を生み出すという。そして提言の一つとして、カミング・アウトについての前向きな話などをメインとした、若者たちが話をする機会[パネル・ディスカッションなど]を創出することを訴えた。

 

翻訳&記事の解説:石田 京介
(石田 京介:カナダ在住/翻訳スタッフ)

 

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