米国ユタ州「ブロークバック・マウンテン」上映禁止に反発の声

by 釜爺

 ユタ州の「LGBTコミュニティ・センター」は、ラリー・H・ミラー氏が所有する劇場のひとつで「ブロークバック・マウンテン」の上映がキャンセルされた後、氏が所有する企業へのボイコットを呼びかけている。

 ユタ州で最も金持ちで最も有名なモルモン教徒の一人であるミラー氏は、たくさんのカーディーラーや映画館、「NBA ユタ・ジャズ」(プロ・バスケットボールのチーム)と、何十もの他の会社を所有している。

 LGBTセンターは、アクションの中で「みんなで協力してやっていきましょう、この活動にはみなさんの寄付が必要なのです」と呼びかけている。

 「ブロークバック・マウンテン」は、地方紙に上映広告が掲載されていた。ところが1月6日夜、映画ファンが、ミラー氏が所有するビル「ヨルダン・コモンズ」内の映画館「メガプレックス17」のプログラムに「ブロークバック・マウンテン」が載っていないことに気付いた。

 多数の各賞ノミネートと熱烈な評価を受けたこの映画は、ユタ州の強力なモルモン教会の下で攻撃を受けている。映画を引っ込める決定が、教会の影響を受けたかどうかについては、わかっていない。

 映画は、強力なモルモン教会のお膝元であるユタ州で、ずっと攻撃を受けている。同性婚を禁止するための州憲法改正を支持し、その他のLGBTに関する問題と常に敵対している保守的な団体「ユタ・イーグル・フォーラム」は、映画を上映しないという決定を称賛した。

 「ブロークバック・マウンテン」は、まだソルトレイクシティで見ることができる。「ソルトレイク・フィルム・ソサエティ」が経営する、ブロードウエイ劇場とタワー劇場で上映されている。

 ミラー氏のグループが映画を上映しないという決定は、別のチェーン店が、ワシントン州ポールスボーで「ブロークバック・マウンテン」を上映しないことを突然決めた翌日に下された。

 リーガルグループ系の・マルチプレックス(複合型)映画館は、キッツアップ・サン新聞の木曜版に「ブロークバック・マウンテン」の広告を掲載し、前売券を劇場で販売して、宣伝を促進していた。

 しかし、人々が映画館に行ったときには、ポスターは取り外されており、映画を見ることはできなかった。

 その劇場は、リーガルグループ系が所有しているチェーン店である。テネシー州のノックスビルに本拠地がある「リーガル・エンタテインメント・グループ」は、世界で最も大きな映画館主のひとつである。

 

 9日、「ブロークバック・マウンテン」に出演した俳優の一人、ヒース・レジャーは、上映を中止した会社に対して、「この措置は人種差別と同じものである」と強く抗議した。

 「私は、個人的に、この映画に問題があるとは思いません。しかし、ユタ州のモルモン教徒はこの映画を問題視するでしょう。私は、それはとてもおかしなことであり、また、社会がかなり未成熟なことを表していると思います」とレジャーは言った。

 「もしふたりの人間が愛し合い、ふたりが愛よりも、愛の中に怒りを表現しなければならないのだとしたら、我々はそのことについてもっと考えるべきだと私は思うのです」と彼はつけ加えた。

 

 ミラー氏が所有する映画館で「ブロークバック・マウンテン」を上映しないという決定について、1月17日、ソルトレイクシティのテレビ局(KUTV)は、以下のように報告した。

 「ミラー氏はラジオ局(KSL Radio)のインタビュアーに対し、『私は映画を引き上げたとき、言うべきことは全て言った、いいかね? 他に何が聞きたいというんだね?』とだけ言い、リポーターを払いのけました。事前の大広告にもかかわらず、なぜ彼が映画を引き下げたのかについて、まだ公的な場で説明していません」。

 

翻訳&記事の解説:釜爺
(釜爺:千葉県在住/ボランティアスタッフ)

 

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