欧州議会、同性愛嫌悪に警鐘を鳴らす決議案を採決 by Nick |
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欧州議会は1月18日に「同性愛嫌悪」に対する共同決議案を採決した。LGBT活動家たちは、ヨーロッパにとって大きな進歩だとしてこれを大いに歓迎した。 「欧州での同性愛嫌悪」と名づけられたその決議は、5つの政党によって提案され、賛成数469、反対数149、棄権数41で可決された。それはEU加盟国での反LGBT運動と闘うことに対して、欧州委員会により積極的な役割を負わせることを求めたものだ。 決議では「同性愛嫌悪」を「同性愛、またはレズビアン、ゲイ、バイセクシャルやトランスジェンダーの人々に対する非合理的な恐怖と嫌悪で、偏見がもととなったものであり、人種差別、外国人嫌悪、反ユダヤ人主義、性差別と同等なもの」と定義し、EU加盟国に同性愛嫌悪や性的指向による差別に対する行動を起こし、該当国の社会と法秩序において平等の原則を履行促進することを呼びかけている。 さらに決議には、雇用と職場においての平等な待遇を指示することを怠っている国々に対して欧州委員会が法的措置を開始するべきであると明記されており、違反した場合には欧州委員会が刑事罰を課すことを検討すべきとも記されている。 それに加え、欧州委員会には同性カップルとその子どもの権利を保障する提議についても推し進めていくことも求められている。 ヨーロッパのLGBT権利団体が発する主な不平としてあげられるのが、同性婚や市民パートナーシップが合法のEU加盟国に住む登録済みの同性カップルが、ゲイやレズビアンの関係性について認知されていない他のEU加盟国に引っ越した際、その権利を全て失ってしまうことだ。
決議案の審議中、同案の支持者は元共産主義国家で現EU加盟の数カ国を同性愛嫌悪がはびこっているとして非難した。 中でもポーランドとラトビアは一段と厳しい批判にさらされた。 ラトビアは先ごろ憲法を改正し、ヨーロッパで同性婚が禁止された最初の国となった。7月には、アイガルス・カルヴィティス同国首相の批判を受け、首都リガで恒例のゲイ・プライドが禁止された。 ゲイ・プライドの主催者は裁判を起こし、首都リガに対しての差止命令を勝ち取り、パレードは無事に行われることとなった。パレードの行程ではゲイ・プライドに反対する数百人の人々がつめかけ、パレード参加者に腐った卵や侮辱の言葉を投げつけた。その内十数名は警察と乱闘になり、連行された。 ポーランドのゲイとレズビアンは11月に同国数都市でデモを行い、政府に欧州の公民権法を順守するように呼びかけた。 さらにデモ参加者はポズナン市での同性愛者の大量逮捕を非難した。ポズナン市では2005年10月15日に、同性愛者たちがゲイ・プライドの行進を行おうとした際に当局の行進解散命令を拒んだとして警察機動隊が65人のゲイ・レズビアンを拘束した。 欧州議会の審議中に「何もしなければ、EU加盟国の多くで日々確認することのできる暴力犯罪に我々も肩をかしていることになってしまうのです」と、英労働党の欧州議会議員でゲイであることを公表しているマイケル・キャッシュマン議員は発言した。 しかし、ポーランドの欧州議会議員であるコンラド・シュマンスキー議員は、今回の審議は「時間の無駄」で、欧州議会議員はEUの同性愛者の状況について「ヒステリック」になるべきではないと提言した。 「加盟国にはその市民の権利を守るための法体系が独自にあります。ですので、同性愛者を擁護するような同盟のようなものをつくる必要性はないのです。なぜなら、その意図とは反対に、ヨーロッパの統合性を弱めてしまうかもしれないからです」とシュマンスキー議員は続けた。 欧州委員会は10月に、ポーランドがもし同性愛者の権利に反対し続けるようならば、同国はEUへの投票権を失う恐れがあると警告した。
一方、LGBT権利団体である「ゲイ・レズビアンの権利インターグループ(Intergroup on Lesbian and Gay Rights)」の幹部は決議案をたたえ、EU司法内務担当委員のフランコ・フラッティーニ氏に決議案に基づいた行動を起こすように呼びかけた。 「欧州議会が、『我々が憎しみと不寛容の風潮に屈していかないこと』を今回のように強くはっきりと分かる形で、発信したことについて、喜びを非常に感じています」と、インターグループのソフィー・イント・ベルド副代表は述べた。 「同性愛者の権利関連では非常に大きな進歩を遂げてきた英国でさえも、クリスマス直前に同性愛者という理由だけで若者が蹴り殺された事件がありました。EUが何もしなければ、その若者や同じような仕打ちを受けたEU各国のゲイやレズビアンが浴びせられた攻撃に対して、EU自身も同調していることになってしまうのです」と、インターグループのマイケル・キャッシャーマン代表は述べた。
翻訳&記事の解説:Nick
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