●○嘆願書へのご協力、たいへんありがとうございました○● 2000年4月に逮捕されて以来、1年4ヶ月あまりにもわたって強制収容を受けている、イラン人ゲイ難民シェイダさん。近年、難民申請を行っている外国人については、収容後一年程度で仮放免(一時的な釈放)をするのが普通ですが、シェイダさんについては、4月27日に行った三回目の仮放免申請が6月20日に不許可となるという、異例の処分を受けました。 これに対して、シェイダさんは6月28日に四度目の仮放免申請をし、私たち「チームS・シェイダさん救援グループ」は、シェイダさんをただちに仮放免するよう求める嘆願書を作成、署名を呼びかけました。 「すこたん企画」サイトを始め、さまざまなところで呼びかけを行い、多くの皆様のご協力を頂いた結果、私たちは8月31日までに、合計326通の嘆願書を集めることが出来ました。嘆願書については、8月31日に、シェイダさんを収容している茨城県牛久市の「法務省入国者収容所 東日本入国管理センター」に提出させていただきました。 嘆願書の収集にあたっては、皆様から本当に心温まるご協力を頂きました。この場を借りて、心からお礼を申し上げます。 ●○収容所当局との交渉は「のれんに腕押し」○● 8月31日、牛久収容所を訪問したチームSメンバー6名は、午前中にシェイダさんと面会した上で、午後1時から牛久収容所当局との交渉を行いました。 交渉の内容は、大きく分けて二つあります。まず、シェイダさんの仮放免に関して。シェイダさんを直ちに仮放免することと、前回の申請が不許可となった理由を問いただすことです。 「シェイダさんをただちに仮放免して下さい」という要求に、当局は「現在、慎重に検討しているところです」との答え。四度目の仮放免申請は6月に行われており、すでに二ヶ月がたっています。現在、どの段階にあるのですか、という質問には、「個別に総合的な検討をしているところで、内容については言えません」とそっけない返事。 では、前回の申請が不許可になった理由は?これについて当局は「そもそも強制送還命令が出た外国人は帰国するまで収容するのが原則で、仮放免は特別な理由がある場合だけ。シェイダさんには特別な理由がないと判断した」との答弁。では仮放免が認められるには、どんな理由があればいいのかを問うと、「個別に総合的に検討するとしか言えない」と意味不明の答え。私たちは、情報公開請求で手に入れた内部規定「仮放免取扱要領」を片手に追及を繰り広げましたが、結果的に押し問答に終わってしまいました。 交渉の第二のテーマは、シェイダさんの医療に関すること。シェイダさんは歯痛・耳痛・足の付け根部分の痛みという持病を持っていますが、長期の勾留と不十分・不適切な医療によって、体調が悪化しています。さらに7月には、収容所の医師より「とっととイランに帰って治療しろ」と暴言を受け、抗議したところ左手を殴られるという暴行を受けました。 私たちは、シェイダさんの病気は収容所の医療室では対応できないのだから、外部の医療機関に一本化すべきだ、と迫りました。また、暴言・暴行事件については、内部調査で真相を明らかにし、シェイダさんに謝罪せよ、と要求しました。当局は、内部調査は行うことを表明しましたが、「彼が言っていることが全て正しいとどうして言えるのですか」などといった暴言も飛び出しました。 ●○シェイダさんは仮放免されるのか?○● 先にも述べたように、シェイダさんの4回目の仮放免申請は6月になされており、すでに二ヶ月以上経過しています。この仮放免申請に対する収容所側の決定が9月中になされることは間違いありません。 シェイダさん側は、仮放免が今回も認められなかった場合には、各種の法的処置をとることを検討しています。また、もしシェイダさんが仮放免された場合には、それを記念してパーティを開催する準備を進めています。 326通の嘆願書が効いて、彼の仮放免が実現するのか、それとも、収容所当局がまたしても不許可の決定をするのか。ぜひともご注目下さい。
曇り空の8月28日、シェイダさん在留権裁判の第六回口頭弁論が行われました。 シェイダさん在留権裁判は、提訴からすでに1年を経過しており、主要な論点はほぼ出尽くしています。今回の法廷は、これらの主要な論点以外の細かい論点についての議論の整理が中心となりました。 今回問題になった論点は、以下の通りです。 (1)「退去強制令書」の違法性について この裁判は、シェイダさんを強制送還するという法務省の決定が違法かどうかを争っている裁判です。難民条約には、難民を迫害が行われる可能性のある国に送還してはならないという原則(ノン・ルフールマン原則)があり、日本の入管法にも、この原則に従う規定があります。法務省は昨年、シェイダさんを難民と認めない決定を行い、シェイダさんを強制送還する命令書(退去強制令書という)を発付したのですが、シェイダさんが難民に該当するなら、この処分は「ノン・ルフールマン原則」違反となり、退去強制令書の発付は違法だから取り消さなければならないということになります。 これについて、裁判所はちょっと不思議なことを言い始めました。もしシェイダさんが難民だとした場合に、退去強制令書全体が違法で取り消されるべきなのか、それとも、退去強制令書に書かれた「送還先」(どこの国に送還するか)だけが違法で、そこだけを取り消せばいいのか、シェイダさん側と法務省の主張を聞きたい、と言い始めたのです。 シェイダさん側は、送還先というのは退去強制令書の本質をなす部分だから、送還先が違法なら退去強制令書全体が違法となる、と主張する書面(原告準備書面3)を前回(7月3日)提出しました。法務省の主張が待たれていましたが、今回法務省が出した書面(被告準備書面3)には、次のような旨の主張が書かれていました。 「そもそもシェイダさんは難民ではないのだから、質問自体ナンセンスである」 (2)拷問と迫害の違いについて 難民条約には、上に述べたような「ノン・ルフールマン原則」がありますが、拷問等禁止条約にも、「拷問を受ける可能性のある国に送還してはならない」という規定があります。今回、市村陽典裁判長はこの点について、拷問と迫害の違い、およびシェイダさんの場合この「拷問」がどのように問題になるのかについて主張してほしいと注文を付けました。 (3)シェイダさんが難民である理由について 難民条約では、難民とみなしうる迫害の理由について「人種、民族、宗教、特定の社会的集団の構成員であること、政治的意見」の5つに限定しています。シェイダさんは同性愛という「特定の社会的集団の構成員であること」を理由に難民としての資格を主張していましたが、彼はそれ以外に、イランのソドミー法撤廃を政治的意見として掲げており、これも難民となるべき理由に当たります。 裁判所はこれについて、シェイダさんが難民となるべき理由として「特定の社会的集団の構成員であること」以外に「政治的意見」も含まれるのかどうかを整理するようにシェイダさん側に注文を付けるとともに、法務省側にも、「特定の社会的集団の構成員であること」について何らかの主張があるなら主張するように示唆しました。 裁判所は今回の法廷について、これらの論点について交通整理をするとともに、論点はほぼ尽くされたとして、次回までに証人申請を行うようにシェイダさん側に要請しました。次回の法廷は10月16日(火)午後1時30分からとなりました。 現在、シェイダさんの弁護団では、欧米に拠点をおくイラン人ゲイの人権活動家を証人として立てることを含め、次回の法廷で証人申請をするための準備を行っています。次回の法廷で証人申請がなされれば、裁判はいよいよ、第二段階に入ることになります。これまで、書面の提出と調整だけで数分で終わっていた退屈な法廷も、いよいよ中身のある、面白いものになってくると思います。皆さん、傍聴のほどよろしくお願いします。
<<シェイダさん在留権裁判 第七回口頭弁論>>
●日時:2001年10月16日(火)午後1時30分〜(1時集合) ●場所:東京地方裁判所第606号法廷 (営団地下鉄霞ヶ関駅下車徒歩3分)
<<第七回口頭弁論 報告集会>>
●日時:2001年10月16日(火)午後2時〜 ●場所:未定(弁護士会館5F会議室を予定)