チームS:シェイダさん救援グループ 2001/10/29 up
米国在住のイラン人権活動家を証人申請
〜10月16日、シェイダさん在留権裁判第7回口頭弁論開かれる〜

 2001年10月16日午後1時30分より、シェイダさん在留権裁判の第7回口頭弁論が開かれました。法廷はいつもと変わらず東京地方裁判所の606号法廷でした。今回の口頭弁論は、書面のやりとりを中心とするこれまでの口頭弁論から、証人尋問の段階に入る区切り、折り返し点となるものです。
 シェイダさん側は、シェイダさんのイラン時代からの歩みをまとめ、シェイダさんがなぜ難民といえるのかを再整理した「原告準備書面(5)」を提出しました。また、裁判の証人候補として、シェイダさん本人と、アメリカ合州国在住のイラン人人権活動家、ゴウダルズ・エグテダーリ Goudarz Eghtedari 氏を申請しました。ちょっと詳しく見ていきたいと思います。

「準備書面(5)」でシェイダさんの難民たる理由を再整理
 シェイダさん側が今回提出した「準備書面(5)」は、シェイダさんのイラン時代から現在までの歩みを再整理し、難民たる理由を再整理したものです。
 シェイダさんは、少年時代に同性愛者であることを自覚し、家族や社会、国家による抑圧から逃れるためにイランを出国しました。その後、1992年に欧米を拠点とするイラン人同性愛者の人権団体「ホーマン」に参加し、同性愛者としての社会活動を開始しました。1999年、あるイベントで同性愛者であることを公にカミングアウトし、その後はレズビアン・ゲイ・パレードや人権に関わる公的なイベントにも参加し、イラン人の同性愛者として人権の確立を訴えてきました。こうしたシェイダさんの活動は、マスコミにも取り上げられ、イランの治安当局がシェイダさんの存在を把握している可能性は大きくあります。今回の書面では、シェイダさんが同性愛者であるということだけでなく、イラン当局がシェイダさんの存在を把握しているかどうかといった側面にも着目し、シェイダさんを強制退去させた場合、本国で厳しい迫害を受ける可能性が高いことを強く主張しました。
 また、シェイダさんはイラン国内での同性愛者の人権の確立や、イラン刑法からのソドミー条項の撤廃などを求めていますが、イラン国内の状況に照らせば、これは立派な「政治的意見」と言えるものであり、今回の書面では、シェイダさんが自己の性的指向に関わって持っているこれらの主張を「政治的意見」とし、シェイダさんが難民となるべき補足的な理由に加えました。
 さらに、シェイダさんは少年時代、イランの左翼組織「イラン革命的労働者機構」(Rahe Kargar:1975年にイラン最大の反体制組織ムジャヒディーン・ハルクから左派グループが離党して創設された組織で、イラン国内では非合法)に参加していたことがあります。これについても、シェイダさんが難民であることの補足的理由としました。

在米イラン人活動家を証人申請
 今回のもう一つの大きな展開は、在米イラン人人権活動家、ゴウダルズ・エグテダーリ氏の証人申請です。
 ゴウダルズ・エグテダーリ氏は現在45歳の米国の市民権を持つイラン人で、オレゴン州のポートランドでシステム工学の研究をする傍ら、「米国イラン人人権グループ」Iranian Human Rights Group USA の議長としてイランの人権状況の監視活動を行っています。同性愛者の人権については、「イラン・イスラム共和国と姦通・同性愛に関する死刑の執行」という著作があり、イランにおける同性愛者への弾圧のあり方の変遷を詳細にまとめています。また、シェイダさん裁判についても、イランの同性愛者への処刑の状況についての意見書を執筆してくれました。
 シェイダさん側は、シェイダさん本人に加え、このエグテダーリ氏を今回証人申請しました。

法廷での反応:裁判官もシェイダさん側の書面に高い評価
 今回の口頭弁論は、他のいくつかの難民裁判と一緒に行われましたが、シェイダさんが一番最初でした。「準備書面(5)」は事前に裁判所に提出してあり、裁判長もこれを見た上で法廷に臨んでいました。裁判長は雰囲気的には、こちらの主張にかなり理解を深めているようで、「議論が大変深まってきましたね」と肯定的なコメントを口にしていました。
 証人尋問については、シェイダさん側の代理人弁護士である大橋毅氏が、エグテダーリ氏の尋問について説明したところ、裁判長は、「代理人は証人候補と既にコミュニケーションをとっているか」「招請の手間や経費などについて算段は整っているか」と質問、問題がないことを確認した上で、次回の法廷で証人の採否について決定すると述べました。また、裁判長は、証人の採否について被告の法務省側で意見があれば書面で出してくれ、とつけ加えました。これも、かなり肯定的な雰囲気でした。
 一方、被告側は、前回の法廷でシェイダさん側が求めていた質問についても、裁判長から出た質問についても、今回は回答の書面を用意していませんでした。裁判長は「同性愛者が特定の社会的集団であるかどうかといった議論について、もし意見があるなら書面で出してほしい。また、拷問等禁止条約についても、意見があれば出してほしい」と被告に注文。被告側は、次回の法廷までに書面をまとめると表明しました。

次回の口頭弁論の焦点は「エグテダーリ氏の証人採用なるか?」
 最後に次回の口頭弁論の日程が決まりました。次回は12月4日、午後4時から、同じ法廷で行われます。次の裁判の焦点は、ゴウダルズ・エグテダーリ氏が証人として採用されるかどうか。ぜひともご注目のほど、お願いします。終了後、午後4時30分から報告集会を行います。

■□■シェイダさん在留権裁判 第八回口頭弁論■□■
●日時:2001年12月4日(火)午後4時〜(3時30分集合)
●場所:東京地方裁判所第606号法廷(営団地下鉄霞ヶ関駅下車徒歩3分)

■□■第八回口頭弁論 報告集会■□■
●日時:2001年12月4日(火)午後4時30分〜
●場所:弁護士会館5Fを予定