チームS:シェイダさん救援グループ 2002/08/02 up
 
それなりの証拠を出してきた法務省、しかしその趣旨は不明
〜シェイダさん在留権裁判第11回口頭弁論の報告〜

 シェイダさんの証人尋問が行われた5月8日から2ヶ月と10日後の7月19日、シェイダさん在留権裁判の第11回口頭弁論が開かれました。

 今回は、証言などもない普通の法廷だったのですが、前回の法廷で法務省が「外務省などに頼んでイランの同性愛者の迫害状況を調査している。ちょっと時間がほしい」と裁判長に頼んだのが聞き入れられ、2ヶ月以上たった7月19日の開催になったものです。

 前回の法廷以降、法務省は「音無しの構え」で、裁判前日まで何も出してきませんでした。しかし、この日の法廷で法務省は、ぶあつい本格的な証拠資料を提出してきました。そのなかみは、イギリス政府がまとめたイランの人権状況に関するレポートと、オーストラリアで出された、同性愛者であることを理由とする難民申請に関する二つの審査結果についての文書です。

 「すわ、法務省も本気になってきたか」と、こちらもちょっと身構えましたが、ちょっと見てみると、イギリス政府のレポートの方は、同性愛者の人権状況については、「イランの刑法では、同性間性的接触を行った者は死刑に処される。ただし、事前にそのことを認め、告悔した者は許される」と書かれているだけ。オーストラリアの方も、一人は同性愛者であることを理由として難民賭して認められた事例であり、もう一つは、本当に同性愛者かどうかわからない、むしろ異性愛者であるかも知れない、という理由で難民認定を認められなかったという事例。いずれも、シェイダさんの事例に関して、有効な反証にはなり得ません。

 これでいったい、何を証明したいのか……しかし、法務省は証拠を出しただけで、これらの証拠によって何を主張したいのかを述べる文書(準備書面)は提出しませんでした。また、外務省に頼んでいるという調査についても、原告側の大橋弁護士や裁判官に再三再四「外務省に何を頼んでいるのですか?いつごろ、それは出てくるのですか?」という質問に対して、「何を頼んでいるのかわからない」「いつ来るのかもわからない状態でして……」としどろもどろの答弁。数多くの難民訴訟を抱え、法務省の訟務検事たちもいささか疲れ気味の様子です。

 一方、裁判所の方は、シェイダさんが申請している在米イラン人人権活動家、グダーズ・エグテダーリ氏の招請については、いまいち乗り気でない様子。「なんとか書面で提出できないんですかねー」という感じ。しかし、こちらとしても、法務省の立証が不十分である以上、今後何が出てくるかわかりません。原告側としては、エグテダーリ氏を法廷に呼ぶ可能性を残して、次回も通常の口頭弁論を入れることにしました。法務省側も、きっと外務省から証拠を手に入れて、何か出してくることでしょう。

 法廷には、暑いさなかにも関わらず、20名ほどの方が傍聴に詰めかけてくれました。初めて来られた方もおり、報告集会でも今後の進行などについて質問が飛び交いました。また、最近の難民をめぐる政界の動きや、市民活動の広がりなどについてもいろいろな情報が紹介されました。

 次回の法廷は、9月11日、午後3時〜。ぜひとも法廷にお集まり下さい。次の法廷で、シェイダさん裁判の今後の方向性がはっきりと見えてくると思います。

■□■シェイダさん在留権裁判 第12回口頭弁論■□■
 ○日時:2002年9月11日 午後3時〜
 ○場所:東京地方裁判所6階606号法廷
 (営団地下鉄霞ヶ関駅下車徒歩3分) 
■□■第12回口頭弁論報告集会■□■

 ○日時:2002年9月11日 3時30分〜
 ○場所:弁護士会館を予定