チームS:シェイダさん救援グループ 2005/01/16 up
 
(1)1月20日はぜひ法廷へ!
シェイダさん第2審判決をともに体験しよう!
 

 皆さま、明けましておめでとうございます。

 昨年、屈辱的な第1審判決が出されてから、はや1年が経過しようとしています。当初は、半年くらいで終了するかと予測された第2審も、終了までに約1年を要しました。

 第2審は、第1審の闘い方とは趣を変えました。第1審では、シェイダさんもチームSも、その総力を挙げて、国際的なネットワークを活用し、徹底的な証拠の発掘と提出、そして、それらをなるべくわかりやすく、網羅的に説明した膨大な量の準備書面を提出しました。また、法廷についても、なるべく多くの皆さんとともに傍聴に取り組み、最後には数百人分の署名まで提出しました。まさに「総力戦」でした。

 第2審は、この第1審の積み上げをもとにしながら、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)をはじめとする、よりレベルの高い、権威を持った機関が支持しているのだ、ということを積極的に立証する方向性で取り組みました。

 この戦略転換の根底には、日本の司法に対する、ある失望、絶望が存在しています。もちろん、この失望、絶望は、あらゆる裁判において市民側が体験し表明し尽くしてきたものでもあります。すなわち、司法といえども日本の国家権力の一つであること、すなわち日本の司法は、例えばニュージーランドなどで同様のイラン人ゲイの難民裁判などにおいて示されたような、ゼロの地点から何が正義なのかを検証して判断を行うという地平に立つことはなく、強者の=最終的には判事の任命権の源泉である内閣総理大臣の=顔色をうかがい、弱者=市民社会については、これを一瞥もせず足蹴にして恥じない、単なる<日本の国家権力>の一出先機関に過ぎない、ということです。

 この戦略の下で、第2審では第2審なりの多くの成果が上がりました。UNHCRはシェイダさんの裁判に特化した法廷意見を自ら執筆し、法廷に提出しました。また、ジェンダーや特定の社会的集団にかかわる、UNHCRのガイドラインなど多くの文書が、たくさんのボランティアの皆さんの手によって翻訳され、提出されました。シェイダさんは、イラン国内や欧米の亡命イラン人の手によって発行されている様々なメディアをインターネットで検索し、数多くの証拠資料を発掘、提出しました。

 一方、法務省側は、これに対する反論や証拠資料の提出などの努力を、ほとんどしていません。

 こうしたことから、公平に見れば、第2審においても、シェイダさん側の圧倒的優位は揺るがない、というのが本来の状況です。

 しかし、東京高裁は地裁にもまして保守的である、と言われています。残念ながら、私たちは、裁判の進展状況について正当に評価し、私たちの勝利を確信することはできません。逆に、「敗訴」を前提に、その被害を最小にするための様々な準備を行うことが求められています。気を引き締め、どのような判決が出ても対応できるように覚悟を決めていきたいと思います。

 第2審判決は1月20日午後3時(2時30分集合)。場所は、東京高等裁判所809号法廷です。関心を持つ皆さまの結集をお待ち申し上げています!!

■◇シェイダさん在留権裁判第2審 判決言渡◇■

 (日時)2005年1月20日(木)午後3時開廷(集合:2時30分)
 (場所)東京高等裁判所(地裁と同じ建物)第809号法廷
    ・東京地下鉄霞ヶ関駅下車徒歩3分(A1出口下車)
 (報告集会)
    ・日時:上記日時法廷終了後
    ・場所:弁護士会館を予定

 
 
(2)メディアを使って暴力を行使する法務省:難民制度「悪用キャンペーン」
 

 1月12日の読売新聞に、「衝撃的な」見出しの記事が載りました。「難民申請、6割虚偽か…強制送還逃れに時間稼ぎ」。その内容は、2004年に提出された難民申請のうち6割が「在留期限が切れた外国人の申請」だったことが法務省の「調査」でわかったとし、日本で難民申請をする外国人の多くが、日本に在留し続けるために難民制度を「悪用」している、と主張するものです。
(記事:http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20050112i301.htm

 見出しは大げさですが、中身のあまりの稚拙&卑劣さに驚きます。

 シェイダさんの事件を見れば分かりますが、迫害を受けて、また迫害の恐怖から祖国を逃れてきた多くの難民は、「難民制度」の存在を知らなかったり、また、各国における申請の方法を知らなかったりします。結果として、申請自体が遅れることはよくあります。また、難民申請は、自分が迫害されているという事実を公にし、それを社会に問うことでもあります。それ自体が、大きなリスクを伴う行為であり、底に踏み切るまでに時間がかかることも当然です。たとえば、同性愛者の場合は、同性愛者であることを理由に難民申請をするためには、同性愛者であることを自己肯定し、同性愛者に対する迫害を不当なものとして認識する、同性愛者としての政治的な意識がどうしても必要になります。(同性愛者であることを引け目に感じたり、カミングアウトについての恐怖が強い場合、いかに迫害の可能性が大きくても、難民申請に踏み切ることは極めて難しいでしょう)実際、難民条約においては、難民たる要件は「人種、宗教、民族、特定の社会的集団の構成員であること、政治的意見による十分に理由のある迫害の恐れ」により、祖国の保護を受けず、また受けることを望まないもの、という最低限の範囲に局限されています。「申請時に在留資格があったかなかったか」などというのは、難民であるかどうかとは全く関係がありません。

 実際、法務省が難民認定をした難民のうち、申請時には在留資格を失っていた人がほとんどであることから見ても、法務省が実際のところ、難民であるかどうかの判断と、申請時の在留資格の有無に関連を見いだしていないことは明らかです。

 この記事を見ると、情報の出所はすべて法務省であり、読売新聞は、法務省の意向通りにキャンペーンを担っているということ、その仕掛けは法務省が行っているということがよく分かります。このキャンペーンは、「外国人犯罪」などをキーワードとする最近の排外主義的な傾向にのっかって、難民申請者の多くが、たんに在留期限を延ばそうとする「ニセモノ」である、という考えを多くの人々に植え付け、難民制度や難民申請者に対する国民の不信をあおろうというものです。

 これに限らず、最近、法務省は、きわめて排外主義的な動向を示しています。収容されていた難民申請者を仮放免するのに、「就労禁止」という要件をつけ、そもそも生活することが不可能な状況にしておいて、これを破ったとして仮放免を取り消し、収容してしまう、というケースが出てきています。働かないで、どうやって日本社会で生きていけるというのでしょうか。それとも、すべての生活費を、仮放免の身元引受人が払えというのでしょうか。難民申請者や支援者の側が想像もつかないような過酷な措置が、現実問題として、次から次へと展開されている、というのが現実です。

 私たちは、こうした法務省の卑劣かつ悪辣な施策やキャンペーンに対抗していかなければなりません。また、マスメディアに対しては、法務省の卑劣かつ拙劣なキャンペーンに乗るのでなく、メディアの自立性・独立性に則った適切な報道を行うよう、強く呼びかけるものです。