チームS:シェイダさん救援グループ
法務省が入国管理局の収容施設の待遇に関する不服申立制度の設置について
パブリック・コメントを募集!
法務省にパブリック・コメントを集中しよう!

 法務省入国管理局の収容施設(収容場・入国者収容所など)は、職員による暴行・撲殺事件といった極端な事例を始めとして、被収容者に対する劣悪な待遇や、被収容者の声を届ける制度の不備など、多くの問題が存在しています。私たち「チームS・シェイダさん救援グループ」では、昨年4月から東京入管第二庁舎の収容場(東京都北区)、8月から茨城県の入国者収容所(茨城県牛久市)に収容されたイラン人ゲイ、シェイダさんの支援をしてきましたが、支援活動の中でも、これら収容施設における待遇の問題には常に頭を悩まされ続けてきました。
 これについて、法務省が現在、入国管理局の収容施設における被収容者の待遇についての不服申立制度を作ることを検討しており、これについて、6月13日までの期限で、一般にパブリック・コメントを募集しています。この機会に多くの人が、法務省に対して外国人収容施設の処遇問題についてパブリック・コメントを送ることは非常に重要です。ぜひとも法務省に、パブリック・コメントを集中しましょう。

<<あなたも法務省にパブリック・コメントを!>>

 入国管理局が新設を検討している制度は、被収容者が待遇に不服があるときに、施設長に不服の申立をすることができるというものです。しかし、現在も類似の制度はあり、あえてこのような制度を重ねて設ける背景には、政府から独立した人権委員会の新設など、最近の人権行政の変化に建前的に対応しておかなくてはならないといった事情があるものと思われます。これをそのままにしていると、法務省にとってのみ都合の良い制度ができるだけで、結果的に被収容者の処遇は改善しない、ということになってしまいます。
 この「パブリック・コメント」は、入管施設に収容されている人が、自分の意見を法務省に主張できるとてもよい機会であり、また、在日・滞日外国人の人権に関わるNGO/NPOが、日頃から感じている収容施設の問題点を公的なルートから法務省に指摘できる、とてもよい機会でもあります。
 私たち「チームS」では、牛久の入国者収容所に収容されているシェイダさんの処遇について、以下のような問題点を感じております。

1.居住環境が悪い(東京入管:十条)
2.面会時間の短さ、および係官の立会があるため、自由に意見交換が出来ない
3.通信の自由の侵害:外部からの電話を取次いでくれない
4.難民不認定処分取消訴訟・退去強制令処発付処分取消訴訟などは、自らの生命・身体の自由に大きくかかわる訴訟であるにもかかわらず、被収容者は裁判に出廷できない
5.歯科治療施設が十分でなく、必要に応じて外部治療が受けられない(シェイダさんに関しては一応、外部治療が認められた)
6.外部での歯科治療に公費負担がない

 これらの認識に基づき、「チームS」では、以下のようなサンプル・レターをまと
めました。その他にも、いろいろな問題があると思います。入管施設の処遇の問題点
について、法務省にパブリック・コメントを集中しましょう!

<<送付先・送付の仕方>>

●時間のない方のために●
 以下のサンプル・レターに、氏名・職業・住所(市町村まで)をご記入の上、次の
送付先にお送り下さい。(氏名・職業・住所については、差し支えある場合は必要な
いと思います)
○法務省入国管理局警備課
住所:〒100-8977東京都千代田区霞が関1-1-1
メールアドレス:shoguu@moj.go.jp
FAX:03-3592-7368

●自分で書いてみたい方に●
 意見の要旨80字、意見800字を目安に執筆し、住所(市町村まで)、氏名、職業を記入し、上の送付先にお送り下さい。

<<サンプル・レター>>

(氏名)
(職業)
(住所)
(意見の要旨)
 不服申立制度は、第三者機関を申立先とすべきである。また医療提供の拡大、通信制限の撤廃、行政訴訟への出廷の保障など、処遇のあり方をかえる必要がある。
(意見)
 「入国管理局収容施設における新たな不服申立制度の導入に関する意見募集」を拝見いたしました。貴省お示しの不服申立制度について、二点指摘したいと思います。
 まず、新設の不服申立制度は、不服の申立先が「施設長」となっていますが、施設長は施設の管理責任者であり、問題の一方当事者であるといえます。そうである以上、不服について中立・公正な立場から調査・決定を行える立場にあるとはいえず、申立先として不適当です。
 中立公正な立場から不服に関する調査・決定を行うためには、法務省から独立した第三者機関を設立し、そこに強制調査権と強制力ある勧告権をもたせた上で、そこを申立先とすることが適切です。先頃、「人権擁護推進審議会」が人権救済機関の設立を提言しましたが、この機関が政府からの独立性および強制的調査・勧告の権限をもつのであれば、ここを申立先とすることも一つの選択肢であると言えます。
 また、従来設けられていた「投書箱」等による意見聴取制度は、処遇担当職員からの報復が予想される一方、投書者にその結果が通知されないという現実があり、制度利用者はきわめて少ないのが現実でした。新設の不服申立制度を、現状の劣悪な処遇の改善に実効あるものとするためには、第三者機関の導入以外に、以下の事項を満たす必要があります。

(1)法務省のホームページにおける制度新設内容の表記を見るに、不服申立に理由がある場合、具体的な救済が行われるかどうかについての明記がありません。施設長は不服申立に理由がある場合には、申立者を救済すべく、直ちに処遇内容の変更を行うことを明記すべきです。
(2)現行の処遇では、医療、通信など、あらゆる事項について申請書を提出することになっていますが、申請用紙を渡してくれない、申請が拒否された際に理由が開示されない、決定内容が日本語で通知されるので分からないといった問題があります。従来設けられている処遇に関する申請が拒否された場合についても、広く第三者機関、少なくとも法務大臣に異議を申し立てる権利が認められるべきです。
(3)報復を恐れることなく不服申立制度を活用できるようにするために、最低限、各施設に独立した地位をもつ専門の不服申立担当職員を置く必要があります。また、当該専門職員は、申立を行った個人にかかわる情報について、処遇担当職員には開示しないようにすべきです。
(4)被収容者全員に対して、不服申立制度の存在を各国語で十分に周知・理解させることが必要です。また、制度の教示、申立の書式、応答の種類については、各国語で作成する必要があります。
(5)不服申立制度の活用にあたって、被収容者が代理人を選任出来る権利を保障するとともに、本件制度への応答がそれ自体行政処分として訴訟の対象となることを確認すべきです。不服申立にかかわる調査記録や資料は、原則として被収容者および代理人に開示されるべきです。

 つぎに、不服申立制度の新設に加え、現行の処遇のあり方を抜本的にかえていくことが必要です。
 例えば、被収容者は外部との電話のやりとりを制限されています。面会についても時間制限や係官の立会があり、外部と自由に意見交換が出来ません。これは被収容者の通信の自由を不必要に制限するものです。被収容者に対しては、原則として電話や面会などに関する制限を撤廃し、通信の自由を認めるべきです。
 また、収容場や入国者収容所は不十分な医療設備しかもたないのに、外部医療機関への受診は許可制、公費治療の範囲も不当に狭くなっています。公費治療の対象を拡大し、適切な医療提供を保障すべきです。
 さらに、難民不認定や退去強制処分などに関わる行政訴訟は、本人の生命・身体に関わるにもかかわらず、被収容者は裁判に出廷することも出来ません。行政訴訟への被収容者の出廷権は絶対に保障されるべきです。
 貴省におかれましては、これらを踏まえ、入管収容施設における現行の劣悪な処遇を具体的に改革できるような制度を新設していただくよう、強く要望いたします。

以上

解説:なぜ法務省は急に制度新設を言い始めたのか

 法務省が新設を検討しているのは、収容施設の長に対して、被収容者が不服を申し立てることが出来るという制度です。不服を申し立てられた場合、収容施設長は調査の上、申し立てられた不服に回答しなければなりません。また、回答が不服の場合、被収容者は法務大臣に異議を申し立てることが出来るというものです。
 しかし、現行の「被収容者処遇規則」にも類似の制度があり(第41条の1・2)、あえて「不服申立制度」として新しく設ける趣旨ははっきりしません。

<<制度新設提案の背景>>
 法務省が急にこのような制度を作ろうとしている背景には、5月25日に法務大臣に答申された「人権擁護推進審議会(人権審)」による「人権救済のあり方について(答申)」があります。
 刑務所・拘置所や代用監獄の問題、人種主義の問題、旧態依然とした人権救済制度などについて日本は、国連人権委員会などできびしい批判を浴びてきました。これを制度面に解決するため、「人権審」はここ2年間、政府から独立した人権救済機関の設立についての検討を続け、昨年の11月に「中間とりまとめ」を発表しました。しかし、この「中間とりまとめ」は「公権力による人権侵害」へのスタンスが弱いとして多くのマスコミやNGO/NPOからの批判を受けました。とくに批判が集中したのが、拘置所・刑務所・入管収容施設での差別・虐待・人権侵害について新設の人権救済機関
がどのような形でとりあげるのか、はっきりと明記されていないことでした。
 これらの批判を受けて「人権審」委員もこの点について、一定積極的に検討をはじめ、5月25日の答申では、「公権力による人権侵害」への救済については、具体策の明記はありませんでしたが、文章表現上は以前よりもかなり強い調子の文言が盛り込まれています。
 入国管理局が入管施設における不服申立制度の新設をいいだした背景には、この「答申」や、今後の「人権救済機関」の設置をにらんで、たてまえ上、「不服申立制度がある」といえるように制度を整えて、入管施設への「人権救済機関」の介入を阻む意図があるものと思われます。

<<参考資料:法務省の意見募集要項>>
入国管理局収容施設における新たな不服申立制度の導入に関する意見募集

 入国管理局においては,毎年,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)違反の外国人約5万人を入国管理局の収容施設に収容の上送還していますが,平成10年に入管法第61条の7第6項に基づく被収容者処遇規則(昭和56年11月10日法務省令第59号)の一部改正を行い,収容施設の長が被収容者からの処遇に関する意見を聴取する制度(同規則第2条の2)を設けるなどし,被収容者に対する処遇の適正の確保に努めてまいりました。
 今般,入国管理局では,被収容者の人権に一層配慮するため,収容施設の長に対する意見表明にとどまらず,収容施設における新たな不服申立制度を導入することを検討しております。
 そこで,この新たな不服申立制度の導入に関する皆様の御意見を募集いたします。
 なお,いただきました御意見については,法務省入国管理局において取りまとめた上,今回の計画策定の参考にさせていただくほか,その内容を公開する予定でありますが,個々の意見に対する回答はしないこととしていますので,あらかじめ御了承願います。

〈新たな不服申立制度の概要〉
被収容者が自己の処遇に関して不服があるときは,当該収容施設の長に対し不服を申し立て, 当該収容施設の長は,速やかに調査を行って結果を被収容者に知らせ,また,同調査結果に異議 があるときは,法務大臣に対して異議を申し立てることができるようにするものです。

〈意見募集要項〉
1 意見募集期間
 平成13年 5月14日(月)〜平成13年 6月13日(水)
2 意見送付要項
 住所(市区町村までで結構です。),氏名及び職業を記入(電子メール,郵送及びFAX)の上,意見募集期間の最終日必着で送付してください。また,意見の記入に当たっては,意見の要旨を80字以内,意見を800字以内でお願いします。なお,電話による御意見には対応できません。
3 あて先
法務省入国管理局警備課
・郵送:〒100−8977東京都千代田区霞が関1−1−1
・FAX:03−3592−7368・電子メール:shoguu@moj.go.jp
4  問い合わせ先
法務省入国管理局警備課
TEL:03−3580−4111 内線2776
5  その他
【別紙1】出入国管理及び難民認定法(昭和26年10月4日政令第319号)(抄)
【別紙2】被収容者処遇規則(昭和56年11月10日法務省令第59号)(抄)
【別紙1】出入国管理及び難民認定法(昭和26年10月4日政令第319号)(抄)
(被収容者の処遇)
第61条の7
1 入国者収容所又は収容場に収容されている者(以下「被収容者」という。)には,入国者収容所又は収容場の保安上の支障がない範囲内においてできる限りの自由が与えられなければならない。
2 被収容者には,一定の寝具を貸与し,及び一定の糧食を給与するものとする。
3 被収容者に対する給養は,適正でなければならず,入国者収容所又は収容場の設備は,衛生的でなければならない。
4 入国者収容所長又は地方入国管理局長は,入国者収容所又は収容場の保安上又は衛生上必要があると認めるときは,被収容者の身体,所持品又は衣類を検査し,及びその所持品又は衣類を領置することができる。
5 入国者収容所長又は地方入国管理局長は,入国者収容所又は収容場の保安上必要があると認めるときは,被収容者の発受する通信を検閲し,及びその発受を禁止し,又は制限することができる。
6 前各項に規定するものを除く外,被収容者の処遇に関し必要な事項は,法務省令で定める。
【別紙2】被収容者処遇規則(昭和56年11月10日法務省令第59号)(抄)
(意見聴取等)
第2条の2
所長等は,被収容者からの処遇に関する意見の聴取,収容所等の巡視その他の措置を講じて,被収容者の処遇の適正を期するものとする。
(被収容者の申出に対する措置)
第41条
1 入国警備官は,被収容者から処遇に関する申出,その他法令に定める請求又は申出があったときは,直ちに所長等に報告しなければならない。
2 所長等は,前項の報告のあった事項について,速やかに処理し,その結果を当該被収容者に知らせるものとする。