(氏名)
(職業)
(住所)
(意見の要旨)
不服申立制度は、第三者機関を申立先とすべきである。また医療提供の拡大、通信制限の撤廃、行政訴訟への出廷の保障など、処遇のあり方をかえる必要がある。
(意見)
「入国管理局収容施設における新たな不服申立制度の導入に関する意見募集」を拝見いたしました。貴省お示しの不服申立制度について、二点指摘したいと思います。
まず、新設の不服申立制度は、不服の申立先が「施設長」となっていますが、施設長は施設の管理責任者であり、問題の一方当事者であるといえます。そうである以上、不服について中立・公正な立場から調査・決定を行える立場にあるとはいえず、申立先として不適当です。
中立公正な立場から不服に関する調査・決定を行うためには、法務省から独立した第三者機関を設立し、そこに強制調査権と強制力ある勧告権をもたせた上で、そこを申立先とすることが適切です。先頃、「人権擁護推進審議会」が人権救済機関の設立を提言しましたが、この機関が政府からの独立性および強制的調査・勧告の権限をもつのであれば、ここを申立先とすることも一つの選択肢であると言えます。
また、従来設けられていた「投書箱」等による意見聴取制度は、処遇担当職員からの報復が予想される一方、投書者にその結果が通知されないという現実があり、制度利用者はきわめて少ないのが現実でした。新設の不服申立制度を、現状の劣悪な処遇の改善に実効あるものとするためには、第三者機関の導入以外に、以下の事項を満たす必要があります。
(1)法務省のホームページにおける制度新設内容の表記を見るに、不服申立に理由がある場合、具体的な救済が行われるかどうかについての明記がありません。施設長は不服申立に理由がある場合には、申立者を救済すべく、直ちに処遇内容の変更を行うことを明記すべきです。
(2)現行の処遇では、医療、通信など、あらゆる事項について申請書を提出することになっていますが、申請用紙を渡してくれない、申請が拒否された際に理由が開示されない、決定内容が日本語で通知されるので分からないといった問題があります。従来設けられている処遇に関する申請が拒否された場合についても、広く第三者機関、少なくとも法務大臣に異議を申し立てる権利が認められるべきです。
(3)報復を恐れることなく不服申立制度を活用できるようにするために、最低限、各施設に独立した地位をもつ専門の不服申立担当職員を置く必要があります。また、当該専門職員は、申立を行った個人にかかわる情報について、処遇担当職員には開示しないようにすべきです。
(4)被収容者全員に対して、不服申立制度の存在を各国語で十分に周知・理解させることが必要です。また、制度の教示、申立の書式、応答の種類については、各国語で作成する必要があります。
(5)不服申立制度の活用にあたって、被収容者が代理人を選任出来る権利を保障するとともに、本件制度への応答がそれ自体行政処分として訴訟の対象となることを確認すべきです。不服申立にかかわる調査記録や資料は、原則として被収容者および代理人に開示されるべきです。
つぎに、不服申立制度の新設に加え、現行の処遇のあり方を抜本的にかえていくことが必要です。
例えば、被収容者は外部との電話のやりとりを制限されています。面会についても時間制限や係官の立会があり、外部と自由に意見交換が出来ません。これは被収容者の通信の自由を不必要に制限するものです。被収容者に対しては、原則として電話や面会などに関する制限を撤廃し、通信の自由を認めるべきです。
また、収容場や入国者収容所は不十分な医療設備しかもたないのに、外部医療機関への受診は許可制、公費治療の範囲も不当に狭くなっています。公費治療の対象を拡大し、適切な医療提供を保障すべきです。
さらに、難民不認定や退去強制処分などに関わる行政訴訟は、本人の生命・身体に関わるにもかかわらず、被収容者は裁判に出廷することも出来ません。行政訴訟への被収容者の出廷権は絶対に保障されるべきです。
貴省におかれましては、これらを踏まえ、入管収容施設における現行の劣悪な処遇を具体的に改革できるような制度を新設していただくよう、強く要望いたします。
以上
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