マサチューセッツ州の最高裁が同性愛者同士の結婚を容認

by Nick Konishi

 
 

 マサチューセッツ州最高裁判所は、11月18日(火曜日)、180日以内に、同州内で同性愛者同士でも結婚許可証の取得が可能になるような措置をとるように、と判決を下した。これは、マサチューセッツ州の同性カップル7組が、結婚証明書の発行を拒否した州当局に対して起こしていた裁判への判決である。

 最高裁の判決は、アメリカ社会の同性婚問題に対する大きな文化的な亀裂を反映するものであり、来年の次期大統領選挙において大いに議論される話題にもなるであろう。

 マーガレット・マーシャル裁判長は、多数派(裁判官7人中4人)の意見に同調し、カナダ・オンタリオ州の控訴裁判所の2003年6月10日の判決も引用しながら、市民間の結婚について「周りの全ての他人とは無関係の、二人の個人がお互いを伴侶とする自発的な結びつきである」と定義した。

 「伴侶が同性であるという理由で、市民間の結婚によって与えられる保護、利益、義務などを個人に享受させなくしてしまうことは、マサチューセッツ州憲法に違反している。この判決が、我々の社会の結婚の基本的な価値を侵害してしまうことはないだろう」と、裁判長は続けた。

 マサチューセッツ州議会は判決に沿ったなんらかの解決策をだすために、180日以内の期間を与えられた。州議会がなんらかの法的措置をとるために6ヶ月の期間が与えられる、という判決は、バーモント州で以前あった「シビル・ユニオン」法制定の時とは大いに異なる。バーモント州での判決は、結婚の権利を平等にするための全ての責任を、立法者の工夫に委ねてしまった(だから「同性婚」ではない、新しい「契約」制度が作られた)。今回の判決では、裁判所は明白に同性婚の法制化を認めている。そして、州議会は、解決策の微調整をするためではなく、法制化をどのように進めていくかを考えるための期間を与えられたのだ。

 AP通信によって、11月18日のマサチューセッツ州最高裁の意見と、1998年のバーモント州最高裁判所で同州に「シビル・ユニオン」制度の設置をもたらした結婚に関する意見の差異が比べられたが不十分だった。バーモント州の件は、ベイカー氏対州の裁判であり、裁判所は同性婚の法制化を何とか避けるために、回り道をした。その代わりに、判事たちは結婚の「権利」と、結婚「許可証」の違いについて十分な区別をつくった。

 以下、バーモント州の判決である。「将来に行われるであろう裁判では、(同性愛者カップルを対象にした)結婚許可証を否認すること自体が、憲法によって擁護されている権利を否認することに値する、という判決を出そうという試みをするかもしれない。しかし、今、我々はそのような要求を扱っているわけではない。被告らが、異性同士の結婚時に有効なバーモント州法による恩恵と保護を享受する権利がある、ということだけを我々は判決している。今回焦点があたっている憲法の権限に直接配慮するために最適な方法を練り上げて、州議会の優先権を侵害する、といった目的は我々にはない」

 マサチューセッツ州としては、裁判所の判決は上訴の対象とはならない。さらに、州議会は、2004年5月に実施予定である、同性婚の法制化を阻止するために、マサチューセッツ州憲法の改定をすることもできない。州議会では、同性婚に反対するために憲法を改正することも議論されているのだが、議案の通過のためには、合同の州議会で行われる投票で2回連続で議席の過半数を得なければならない。万が一議会を通過した場合でも、住民投票(最も早かったとしても2006年11月までは行われない)にかけられなければならない(よってこの判決が無効化する可能性は少ない)。

 マサチューセッツ州最高裁の判決がでてすぐに、報道が混乱する中で、GLBTの権利団体は公式発表を歓喜して迎えた。
「裁判所は、今日、個人の権利を擁護するための憲法は、異性愛者の家族だけが擁護の対象になる、ということを政府が主張するのをこれ以上容認しない、ということを認めた」と、American Civil Liberties Union(全米市民自由連合)のマット・コール氏は発表した。
「今日、マサチューセッツ州最高裁は新たな歴史を作った」と、人権キャンペーンのエリザベス・バーチ代表も勝ち誇った口調で語った。

 「この判決は、同性婚法制化の影響を直に受ける同性愛者の人々と、全ての公正な市民にとって、大いに喜ぶべきことである。我々はこの重要な一歩を大いに歓迎している」と、全米最大の同性愛者団体、National Gay and Lesbian Task Force(NGLTF:全米・ゲイ・レズビアン・タスク・フォース/歴史の長い同性愛者の権利擁護団体)のマット・フォアマン事務局長は語った。

 「市民として、また家族になる権利を所有している者として、同性婚の正当性を立証することができたこと、また同性婚の法制化という判決が出されたことに、私は心躍る思いだ」と、Marriage Equality California(結婚の
平等を求めるカリフォルニア)のモリー・マッケイ代表は語った。

 マッケイ氏の団体は、サンフランシスコで、ボストン・クリーム・パイやボストン風ベークト・ビーンズやコッド岬の飲み物やマサチューセッツの州旗のミニチュア等をたくさん用意して、行進と集会をすることを企画した。アメリカ国内の他の都市でも、同性婚法制化を祝うための集会がいくつか開かれた。

 Freedom to Marry Project(結婚する自由のためのプロジェクト)のエバン・ウォルフソン代表は、自分は有頂天だと言いながら「判決は、ゲイの人々にとって非常に有意義なものだ。たくさんの家族が救われるだろうし、市民結婚許可証の発行がゲイのカップルにも許可されたことで、誰も傷つきはしないということを見るための、この国にとって、良いきっかけになるだろう」と述べた。

 ニュージャージー州の、結婚問題の告訴の権威であるLambda Legal(ラムダ・リーガル:裁判等を通じて同性愛者の差別をなくす目的で設立された)のデービッド・バッケル氏もまた、今日は歴史的な日であると語った。
「裁判所は、市民間の結婚は異性間に限ったものではないと明白に定義した。これからの州議会は、マサチューセッツ州のカップルが、同性婚を認められるか認められないかということではなく、どのように同等の権利を享受するかどうか、ということについて着目していくことでしょう」

 Gay and Lesbian Advocates and Defenders(GLAD:1978年創立のゲイとレズビアンの人権擁護団体)は、ボストン本部からそのニュースを大々的に知らせた。「我々は勝ったのです」と、バーモント州の裁判と、マサチューセッツ州の両裁判で主任弁護士の一人だったGLADのメアリー・ボナウト氏は語った。
「11月18日(火曜日)の判決は、法的、そして文化的にとても重要な段階だったと言えるでしょう。同性愛者の人々とその家族たちが我々の社会の一員であるという現実に、やっと法律が追いついたのです。ついに、ゲイとレズビアンの家族と子どもたちは、マサチューセッツ州内において、異性愛者たちの家族と子どもたちと対等になったのです」と続けた。

 また、ニューヨーク州・共和党議員のジェロルド・ナドラー氏や、同性愛者であることを公表しているウィスコンシン州・共和党議員のタミー・ボルドウィン氏を含む政界からも同じような声があがっている。「マサチューセッツ州の裁判所は、問題を正しく理解している。裁判所の決断は、全ての個人の尊厳と平等性を肯定し、二級市民が生まれ出ることを禁じたものである」と、ナドラー氏は語った。

 しかしながら、民主党の次期大統領候補であるジョー・リーバーマン氏、ディック・ゲッパート氏、ジョン・ケリー氏やジョン・エドワーズ氏は、同性愛者のカップルの権利を支持するが、同性婚に関しては異議を唱えた。

 同じく次期大統領候補のウェスレー・クラーク氏は、「私は本日の最高裁の判決を高く評価します。大統領になってからは、ゲイやレズビアンの人々が結婚によって(異性愛者のカップルと同等の)法的権利を享受することができるように、努力いたします」とAP通信に語った。

 ブッシュ大統領は、同性婚に頑なに反対していることが、さらに明らかとなった。
「結婚は男女間の神聖な社会的制度である。マサチューセッツ州の判決は、この重要な原則に違反している」と、大統領はロンドンに到着した直後に声明をだした。これに対して、イギリスの諸団体がデモで抗議する場面もあった。

 保守派の指導者たちは、11月18日の判決は、西洋文明の終わりを告げるものに等しいと非難した。

 「この判決は、アメリカの法曹界における暗黒の日々の到来を告げるものである。法律をないがしろにし、社会的に破壊的とも言えるこの判決は、私たちのよく知る社会を破壊してしまうものになるだろう」といった声明を、右翼の法律機関であるCenter for Law and Policy(法律/政策センター)のスティーブ・クラプトン氏は発表した。

 右翼のTraditional Values Coalition(TVC:伝統的価値連合)のルー・シェルダン氏は、フォックス・ニュースに対して、「同性婚は『社会的な大量破壊兵器』であり、文明を破壊するものである」と述べた。TVCはあらゆる手段を使って、同性婚を禁じるためアメリカの憲法を改正することに力を注いでいる。

 しかし、ゲイの活動家たちも保守派たちの反応におじけづいているわけではない。
「最終的には、結婚の価値を認める強い理由があることから、平等という方向に進まざるを得なくなるでしょう。私はいつも楽観的です」と、ウォルフソン氏は述べた。

 NGLTFのフォアマン氏は、「国内の雰囲気は、アンチ・ゲイの過激派によって宣伝された、終わることのない嘘と、中傷と事実の歪曲によって害されてきています」とゲイの活動家たちに向けて警告を発した。「我々はみな、勝つために、もっともっと共に活動することが必要になるだろう」

翻訳&記事の解説:Nick Konishi
(Nick Konishi:東京都在住/翻訳スタッフ)

 

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