マサチューセッツ州議会
同性婚を禁止する州憲法修正案を第一次可決

 マサチューセッツ州の今までの経過を振り返ろう。

2003年11月18日 マサチューセッツ州最高裁判所は、同性カップル7組が結婚許可書の発行を拒否した州当局に対して起こしていた裁判への判決として、180日以内に、同州内で同性愛者同士でも結婚許可証の取得が可能になるような措置をとるように、と判決を下した(マーガレット・マーシャル裁判長)。期限は、2004年5月17日になる。[詳細はこちらから

この判決は最終確定なので、これをくつがえそうという勢力は、「州憲法修正案」を議会に提出して同性婚を禁止しようと、判決後すぐ動きを始める。

州議会内での駆け引きは複雑かつ奇怪なものとなり、毎回大議論が展開される。最終的に、同性カップルに対する権利保障を全否定することは無理だという判断から、「州憲法修正案」は、同性婚は認めないが、シビル・ユニオン(市民の結合=どんな2人であれ、その間に「契約」として結婚と同等の権利を認める仕組み)は認める、という妥協案で議会に提出される。妥協案を作ったのは、上院議長ロバート・トラヴァリーニと下院議長トーマス・フィネラン。

 3月29日・月曜夜、マサチューセッツ州議会は、105対92で、上記の「州憲法修正案」を可決した。予備議決(3月11日)なども含み、3回目の議会で最終議決となった。何百人もの同性婚支持者は、29日じゅう、議会の外で抗議集会を開いた。反対派もほぼ同様であった。[予備議決についての詳細はこちらから

 今回の「州憲法修正案」は妥協案で、保守派にとってはシビル・ユニオンが目障りだし、同性婚支持派にはもちろん受け入れがたいものなので、議員たちの賛否は複雑に割れた。29日の議決でも通るか通らないか、いろいろな予測が乱れ飛んだ。今回の可決は、不満があっても、とにかく「州憲法修正案」を廃案にしないために、保守派が賛成票を入れたことで成立したと見られている。同性婚支持派も、もともとこんな改正に全面反対なのだが、シビル・ユニオンが実現することで揺れている議員もいる。

 しかし、今回の可決は最終的なものではなく、下記の通り、州憲法が改正されるためには、今秋選出の新議会での再議決→マサチューセッツ州民全員の投票による承認、とさらに2段階必要で、その両方のハードルを越えるのはかなり難しいとされている。また、そこまで行くのに、どんなに早くても2006年11月になる。したがって、今回の議決に全く関係なく、5月17日には、同性カップルへの結婚許可書が発行されるわけで、事務当局もその準備をすでに始めている。5月17日以降既成事実が積み重ねられると、2006年11月の州民投票まで行くのも難しくなるだろう。しかし、この後述べるように、同性婚反対の勢力は、ありとあらゆる手段を使って実施の阻止を狙っている。

マサチューセッツ州憲法改正の手順
 州の基本となる根幹の法なので複雑で慎重な手続きが定められていて、ハードルが高い。以下の3段階のすべてを通過しないと改正されない。
(1)州議会で議決(2)同じ案を再び次の会期の州議会[今秋選出の新議会]で議決(3)住民投票にかけて承認[選挙と同時に実施されねばならないので、早くて2006年11月]


 議決を受けて、共和党知事ミット・ロムニーは、最高裁に対して、2006年11月の州民投票まで同性婚実施命令を保留するよう求めるため、司法長官トーマス・F・ライリー(民主党員)にその旨を伝えた(知事には直接最高裁に要請する権利がない)。知事は、「マサチューセッツが同性カップルの結婚を許すならば、混沌と混乱が起こる」と述べている。

 これに対してライリー司法長官は、あまりに法的に長い射程の話なので、ロムニー知事の指示通り最高裁に請願することを拒否した。「最高裁判事の多数が、この議決によって意志を変えないのは明らかだ。私の司法長官としての仕事は、法を実行することであり、私は妥協しない」。

 30日・火曜、知事の法律スタッフが、司法長官に再考を促すよう説得するため3〜4ページのメモを届けた。しかし、司法長官は、同日知事のところへ出向き、最高裁へは行かない旨を改めて告げた。「私は、知事の手紙にひとつも法的議論が述べられていなかったという事実に驚いた。知事がしているのは、政治的な議論だ。知事の仕事は州法の実行なので、そうしてほしい」。ライリー司法長官の支持なしで、同性婚の実施を防ぐのは、ありえない。知事は、それでも何とか同性婚実施を遅らせる手だてはないかと考えている。

 法律の専門家たちも、そのような長期の保留は前例もないし、いったん同性カップルの結婚を認めた後、憲法改正によってその権利が取り上げられるかもしれないなどというギャンブル的なプロセスは、法的には是認しがたい、と口をそろえている。

 29日の議決には、拾いきれないほど多様な議論が行われているが、中でも保守派のキリスト教系のグループは、同性婚阻止のために議員にアピールする大規模なキャンペーンを計画中である。

 Massachusetts Gay and Lesbian Political Caucus (マサチューセッツ・ゲイ/レズビアン政治評議会)の共同代表アーリーン・アイザックソンさんは、「議員の多くが、今日したことを大いに恥じることになると思う。この投票自体ひどい間違いだ」と語った。

 「NGLTF:全米ゲイ・レズビアン・タスクフォース」代表マット・フォアマンさんは、「この闘いは、当然終わっていません。始まったばかりです。マサチューセッツ州の LGBT コミュニティに名誉をかけて誓います、闘いを継続し、2回目の議決で『州憲法修正案』を阻止します。それでもダメなら、州民投票で必ず阻止します。そのために、LGBT コミュニティとともに、できる限りあらゆることをします。31年間闘ってきた団体として、平等の権利を求めるものが勝つという自信があります」と決意を述べた。[NGLTFの詳細はこちらから


訳&記事の解説:伊藤

 

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