親の育て方が間違っていたから、子どもが同性愛になったのではありまん。親の育て方と子どもの性的指向には、何の関連もありません。子どもが同性愛者であることに関して、親に責任はないのです。子どもの問題を引き受けすぎて、自分を責めるのはやめましょう。
逆に子どもを責めてもいけません。子どもが同性愛者であることについて、本人には責任がありません。性的指向は、自分で選び取ることはできないのです。同性愛者の子どもの多くは、いつかはみんなと「同じ」になりたいと願い、何度も異性を好きになろうと試みます。それでも、異性に関心が向かない自分を認めざるを得なくなり、やっとのことで相談に来るのです。
ですから、子どもの性的指向を治そうとしても、治りません。同性愛はすでに治療の対象から外されていますから、相談にのりアドバイスをしてくれる神経科はあっても、治してくれる神経科はありません。そもそも治す必要がないのですから。
ではここで、自分は同性愛の子を持つ親なのだ、という事実を受け入れるにはどうすればいいかを一緒に考えてみましょう。焦る必要はありません。あなた自身のペースで受け入れていってください。
そのためにはまず、同性愛に関する正確な情報を得て、正確な知識を身につけましょう。「知る」ことがあなたの偏見を取り除き、あなたの心をいくらかでも楽にしてくれるはずですから。
あなたは今、あなたが持っている同性愛者のイメージと、自分の娘や息子を照らし合わせて、混乱しているのかもしれません。そもそも自分が持っている同性愛者のイメージは、どうやって形成されたのかを考えてみましょう。そのイメージの元となっているのは、ネットですか? テレビですか? 新聞ですか? 雑誌ですか? メディアが流す情報によって、あなたは同性愛者に対して歪んだイメージを持たされているのかもしれません。情報発信者の中に「偏見」があると、その偏見を重ねた姿に同性愛者を描こうという意識が入ります。そして、それを見た視聴者や読者にも、「同性愛は○○だ」といった偏見が再生産されます。
しかし、あなたの目の前にいる子どもは、メディアによって描かれた同性愛者ではなく、生身の人間です。あなたと同じように、泣いたり、笑ったり、怒ったり、喜んだり、悩んだりしながら生きているのです。性的指向が同性に向かっているということ以外は、あなたと同じです。
親の側に「偏見」という色眼鏡があると、子どもにもその「偏見」を重ねてしまいます。その「偏見」は、親の中に「恥」や「不安」や「恐れ」といった感情を生み出します。それらの感情の元となる「偏見」をそのままにしておくと、子どもの存在を認められなかったり、子どもの同性指向を治そうとしたり、子どもを拒絶したりしてしまいます。そして何より、自分が「同性愛者の子を持つ親」であることを受け入れるのが難しくなってしまいます。それは親にとっても、子どもにとっても悲しいことです。 ならばどうすればいいか? 答えはいたってシンプルです。頭の中にある「偏見」を捨ててしまいましょう。これまでメディアから受け取った間違った同性愛の情報は全部捨てて、頭の中を真っ白にしてみましょう。そして新たに、正確な情報を取り入れていけばいいのです。今では、当事者の団体も全国にありますし、正確な情報を発信しているLGBTのサイトや、書籍も多数出版されています。
参考団体 NPO法人「LGBTの家族と友人をつなぐ会」http://lgbt-family.or.jp/