Q7■ゲイで困ることって何ですか?(心理的な困難)

 ゲイ男性は、基本的に異性愛の男の子として育てられ、本人が自分の性的指向を自覚するようになってからも、家族や友人や教師など周囲の人間は、異性が好きであることを前提に接してきます。私たちが生きている社会には「男らしさ」「女らしさ」という社会的な性役割の縛りがあって 、男の子には、社会が求める「男らしさ」を身につけさせるような圧力が、常に働いています。 男が「男」になるためには、「男」が主体となって「女」を愛し、「女」とセックスをし、「女」をリードしていかなければなりません。
 こういう社会では、「男」は自分が同性愛者でないことを証明し続けなければなりません。その例として、テレビのお笑い番組などに出てくる、「ホモネタ」「オネエネタ」があります。例えば「お前ホモなんちゃう? 襲わんといて」と言って、わざと尻をつき出して笑いを取ったりします。
 「ホモネタ」を演じるのは、ほとんどが男性タレントです。「ホモ」「オネエ」を演じ、笑い者にすることで、逆に自分が「そっちの人」ではないことを証明でき、なおかつ笑いが取れるわけですから、一石二鳥なわけです。
 一方、視聴者にとっては、「ホモネタ」を見て「笑う」ということが、自分が同性愛者ではないことの証明になります。当事者の子どもが、親や友人と一緒にテレビを見ていて、「ホモネタ」が出てきたときに周囲の人間が笑ったら、それは間接的であれ、自分が笑われたに等しいわけですから、当然傷つきます。同性を好きになる気持ちや、性的な欲望を「笑い」という形で否定されるのは、明らかな人権侵害です。しかし、当事者はなかなかそこで声を上げることができません。さらに、ただ黙っているだけでは、すまされないこともあります。自分も同調して笑わないと、「おまえホモなんじゃないの?」という疑いをかけられるかもしれないからです。そこで、笑うことを選択せざるを得ない当事者もいます。本当は笑いたくないのに、顔は笑っているわけですから、本人にしてみれば、やり切れません。
 「すこたんソーシャルサービス」には、ゲイの当事者から「演技をしていることがつらい」という相談が頻繁に来ます。彼等のほとんどが、どこにも相談できる場所がなく、親身に話を聞いてくれる人を見つけられない中で、やっとの思いで「すこたん」にたどり着きます。
 当事者の大変さは、一人ひとり違います。中には、クローゼットにいることがそれほど苦にならないという人や、自分がゲイであることを比較的肯定的に捉え、安心できる友人にはカミングアウトしている、という人もいます。しかし、大変ではない人の例を一般化し「ゲイはそんなに大変じゃないよ」と言うことはできません。
 社会人になると、ゲイには結婚プレッシャーが現実の問題としてのしかかってきます。職種によっても違いますが、特に金融業などでは「結婚」していることが男性の社会的な信用と関わってくるために、結婚しないと昇進できない企業もあります。
 ゲイ男性は、企業社会の中にあっても、(カミングアウトしなければ)やはり異性愛者の男性として扱われます。「男」を朝から晩までこき使うためには、身の回りの世話をしてくれる主婦「=女」が必要です。結婚制度は、企業が男をフルタイムでこき使うための装置としても機能しているのです。そして周囲は「早く一人前の男になれ=結婚しろ」という圧力をかけてきます。
 また、男性は、家制度がなくなった今でも「○○家」の継承者としての役割を親や世間から期待されていますから、女性とは別の意味での結婚プレッシャーがあります。すこたんソーシャルサービスにも、「家業を継がなければならないのですが、結婚したくありません」とか「長男である自分が結婚しないと○○家が途絶えてしまいます」とか「上司にソープに連れて行かれるのが苦痛でなりません」といった相談が届きます。