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−−日本で初の、同性愛を理由とする難民申請者−−
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2000年5月、東京都北区にある入国管理局第二庁舎で、一人の男性が難民申請を行いました。彼の名前はシェイダ(注1)。彼の祖国はイラン。難民申請の理由は「同性愛者であること」でした。
欧米やオーストラリア、ニュージーランドでは、アジア、アフリカ、ラテンアメリカの各地から、政府・民間の迫害や暴力を逃れて亡命したり、難民認定を受けた同性愛者が数多く生活しています。また、国連で難民問題について取り組んでいるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)も、同性愛者であることを難民となりうる要件の一つとして認めています。しかし、同性愛者であることを理由に、日本政府に難民認定を申請したのは、シェイダさんが初めてです。
なぜ、シェイダさんは難民申請をしなければならなかったのでしょうか。また、その手続は、どのように進んでいったのでしょうか。
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(1)同性愛者への迫害続くイラン
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そもそもの発端はイランという国です。79年の革命以降、イスラム教聖職者による支配体制が続くイランでは、同性愛は禁止され、同性間性行為をした者は死刑により罰せられています。現実に80年代には4000人の同性愛者が死刑にされたといわれており、改革派のハターミー大統領のもとでも、少なくとも数人の同性愛者が死刑にされています。シェイダさんは、91年に迫害を逃れて日本に渡航したわけです。(イランにおける弾圧の詳しいデータはここをご覧下さい) |
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(2)日本でイラン人のゲイ活動家としてカミングアウト、その後…… |
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その後シェイダさんは、欧米に拠点をおく亡命イラン人同性愛者の人権を求める団体「ホーマン」の日本唯一の会員となり、日本の外国人労働者の支援団体などにも参加します。99年、シェイダさんはある性的少数者の団体が開いたイベントで「私はゲイ。私の住んでいた所はイラン。イランではゲイは処刑されています。イスラム圏でのゲイの処刑に反対します」とカミングアウト。その後、レズビアン・ゲイ映画祭や札幌のパレードなどにも参加、同時に日本での難民申請を検討し始めます。ところがそんな矢先の2000年4月、「不法滞在」の容疑で逮捕され、入国管理局の強制収容所に収容されてしまったのです。 |
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(3)そして裁判へ…… |
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シェイダさんは収容後ただちに難民申請を行うとともに、法務大臣の特別在留許可を求めます。しかし2000年7月、法務省はシェイダさんを難民として認めない決定を行い、彼に退去強制令書(イランへの強制送還の決定)を発付します。
シェイダさんは、法務省の決定を違法として東京地裁に提訴し、同時に裁判所に強制送還の執行の停止を申し立てました。提訴だけでは強制送還の執行はとまらず、ほっておくと強制送還されてしまうからです。
2000年9月、裁判所は強制送還の執行停止を決定、シェイダさんは第一審判決までは日本にとどまることができるようになりました。その後、裁判も本格化し、裁判の焦点もほぼ固まりつつあります。(裁判の焦点に関する詳しいデータはここをごらん下さい)
なお、シェイダさんは現在、茨城県牛久市にある強制収容所「東日本入国管理センター」に収容されています。 |
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(4)シェイダさんは今後どうなる? |
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現在行われている裁判について、まず簡単に説明しておきましょう。
シェイダさんは本来、難民であるにもかかわらず、難民申請を却下され、イラン=迫害国への強制送還の決定が出されました。これは日本も加盟している難民条約に違反しています。そこでシェイダさんは、強制送還の決定を違法として、これを取り消すことを要求する行政訴訟を起こしたわけです。
もし、この裁判でシェイダさんが勝訴することができれば、イランへの強制送還の決定は取り消され、シェイダさんは法務大臣の在留特別許可を得て、合法的に日本に在留することが可能になります。しかし、シェイダさんが敗訴した場合には、強制送還が執行され、彼はイランに強制的に送還されることになります。
イランの治安当局が彼についての情報をつかんでいれば、空港で即日逮捕の可能性もあります(オランダから送還されたイラン人同性愛者が即日逮捕されるという事件が起こっています)。幸いにして治安当局が彼について知らなかったとしても、彼はイランで死刑の恐怖にさらされながら、同性愛者であることを100%隠して生活していかなければならないことになります(注2)。
同性愛者であるシェイダさんを政治的・社会的迫害から守るためには、ぜひともこの裁判に勝たなければならないのです。
(※シェイダさんをサポートする一番簡単な方法として、法務省に嘆願書を出すという方法があります。ここをご覧下さい) |
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(注1)イラン政府は各国駐在の大使館を通じて、各国のイラン人コミュニティの動向や反体制活動などについての諜報活動を極めて強力に行っており、彼の本名を公表した場合、最悪の結果を招きかねません。そのため、「シェイダ」という仮名を使っています。
(注2)これ以外に第三の道として、「第三国出国」、すなわち、シェイダさんを受け入れてくれる第三国を見つけて、そこに出国するという方法があります。しかし、第三国の確保のためには、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)による難民認定が必要です。シェイダさんはすでにUNHCRにも難民申請を行っており、第三国出国についても可能性を開く努力を行っています。 |
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