私たち同性愛者は、異性愛者の価値観で構成されて動いている社会の中で、性的指向を隠して異性愛者のフリをして生きることを強いられています。そのために必要とされる莫大なエネルギーは、私たちが自分の可能性を最大限に発揮して、のびのびと生きていく力を奪っています。それどころか、私たちはいつも自分を責め、自分の考え方や行動や生き方を否定し続けるという状況に追い込まれているので、常に心に葛藤を抱えることを余儀なくされています。そんな中で、神経症になったり、自殺するところまで追いつめられることさえあります。つまり、同性愛者は人間らしく生きることができないのです。これは明らかに「人権」の問題です。
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まず、あなたが今いる場所で、あなた自身の「人権」がどうなっているかを考えてみてください。あなたが、自分の「人権」が侵害されているかどうかに敏感にならない限り、同性愛者の「人権」を想像することは不可能だからです。学校で、無理やり同じ制服や髪型にさせられていて、守らないと教師に暴力をふるわれること。職場で、残業をしてもサービスだと言われて賃金をもらえなかったり、本人の状況を全く無視して配置転換や転勤をさせられたりすること。女性という理由で、自分が希望する仕事をさせてもらえなかったり、性的な対象としてしか見られなかったりすること。今の日本には、こうした「人権」侵害を、日常生活の中にいくらでも見つけることができます。それを「仕方がない」とあきらめてしまうのではなく、その「人権」侵害によって、あなたがどれだけ不愉快になり、どれだけ不利益をこうむるかを考えてみてください。そして、同性愛者も同じような「人権」侵害を受けているのだということを知ってください。
そうした困難な状況の中でも、自分の性的指向を回りに明らかにして、自分に素直に・肯定的に・自信を持って生きていくことを選択する同性愛者も増えてきています。ということは、すこたんソーシャルサービスのホームページにアクセスしているあなたも、日常生活の中で、同性愛者に出会う可能性が高くなることを意味しているのです。同性愛者が異性愛者には見えないところで、「日陰の花」として一生隠れ続けている時代は終わりつつあります。私たちは、性的指向に関係なく共に生きる道を模索しなければいけない時代をむかえているのです。あなたが同性愛者に出会った時、理解できないことがたくさんあって驚き、嫌悪感を持ってしまうかもしれません。しかし、そこで「同性愛は認めない」といった、生身の人間の存在を否定する神にでもなったかのような傲慢な態度や、「同性愛はキラいだ」といった、性的指向だけで人間を判断する態度をとることだけはやめてください。
あなたが異性愛者だった場合、強制的に「同性を好きになれ」と言われても「そんなことできるはずがない」と思うように、同性愛者でも異性愛者でも、性的指向を簡単に変えることは不可能なのです。ですから、まず同性愛者の存在を受け入れることが必要で、性的指向の違いを受け入れられないとしたら、それは同性愛者の側に問題があるのではなく、あなた自身に問題があるのです。
ただ、強烈な個性を持っている人を理解するのが難しいように、性的指向が違う人間どうしが理解しあうのはかなり困難なことです。それに、同性愛者の個性も、異性愛者同様、ものすごく多様ですから、性的指向の違いの上に個性の違いが加われば、ますます理解するのは大変になってきます。とはいえ、そもそも人間というのは、一人一人かなり異なった存在なわけですから、お互いの違いを少しずつでも理解しようとしていく姿勢がなければ、人間関係が作れるはずはありません。つまり、同性愛者と人間関係を作っていくことは、一般的に人間関係を作っていくことの延長上にあるというだけのことなのです。
同性愛のことを他人事ではなく、自分の生き方の問題と結び付けて考えれば、世間の常識に縛られず、新しいライフスタイルを模索している同性愛者から、この混迷の世の中を生き抜いていくヒントを得ることができるかもしれません。同性愛者を含めて、様々な少数派が生きやすい社会を作っていくために、お互いに真剣なアプローチをしていきたいものです。
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